私生活の悩みを気軽に相談できる環境も重要
もちろん、同じような「仕事上のミス」や「私生活のハプニング」に直面しても、多くの人は、横領などバカな真似はしない。道を誤るかどうかの違いはなぜ生じるのだろうか。
不正に対する自制心も大きいが、「他人に素直に相談できる性格かどうか」あるいは「相談しやすい環境にあるか」というのも大きな違いとなる。
横領を犯す人は「他人に相談できない金銭的な問題」を抱えている場合がほとんどだが、その問題を少しでも早く他人に打ち明けられれば、問題を大きくせずにすむ。
会社としては、部下や社員が悩みを気軽に相談できるような信頼関係や相談窓口などのしくみを作っておくことが大事である。
イソップ童話の「北風と太陽」ではないが、「ミスをするな」「不正は絶対に許さないぞ」という厳しさ一辺倒では、問題を予防しきれないし、むしろ問題が起きた時に不正を誘発しやすくなるのである。
例えば、「ひとり暮らし」「単身赴任」「海外駐在」の社員は、悩みを抱え込みやすい状況に陥りやすいため、特に意識して、コミュニケーションを取りやすい環境を作ることが望ましい。家族との関係がよくなかったり、職場の人間関係が悪い状態も、不正の温床になりうるので注意が必要だ。(甘粕潔)