米国で解雇後に執務室に戻らせない理由
給与カットなど処遇への不満感そのものが、がんばっている自分を不当に扱う会社への復讐心という形で動機を誘発することもある。このパターンの特徴は、カネに困ったきっかけが自分ではなく、会社側にあると決めつけることである。
したがって、横領の「正当化」も容易にされやすい。自分の懐に入れるカネは、そもそも自分がもらうべきもので、会社から借りを返してもらうと考えるのだ。
給与カットやリストラ以外にも、自分の仕事ぶりに対する上司の評価を不当と感じたり、その結果としての昇給や昇進といった処遇に対する不満が募ると、「仕返しをしてやる」という不正の動機が生じやすくなる。
会社としては「会社に対する恨みが不正の動機にもなり得る」と自覚して、従業員のフラストレーションを高めない工夫をするとともに、万一の「仕返し」を想定した対策が必要かもしれない。米国では会議室に呼んで解雇を言い渡した後、執務室に戻れなくするが、これは腹いせの不正を予防するためでもある。(甘粕潔)