横領の3大動機――「遊ぶカネ欲しさ」「大切な人のために」「会社に恨み」

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「家族のため」の不正は結局家族を不幸にする

   私生活も絡んで生じる「カネが欲しい」という欲求を、会社が抑え込む方法はない。採用面接で見破るのも難しいし、従業員のプライベートな時間を完全に把握することもできない。ただし、カネに関わる仕事をさせている従業員の服装や言動に怪しい予兆が見えたときには、注意してチェックするといった対策は可能だ。

   また、最近増えているのは、遊ぶカネ欲しさではなく「生活費に困って」横領するケースである。給料やボーナスがカットされたり、家族の大病などで急な出費が増えたり、リストラに遭ってしまったために、住宅ローンの返済に困り、不正に手を染めるパターンである。

「もし自分がやらなければ、愛する家族が住む場所を奪われる」

という切迫感は、横領の動機になると同時に「大切な人を守るためには仕方がない」という正当化にも結びつく。家族思いの心や責任感が追いつめた行為ということになるだろう。

   しかし残念ながら、どんな理由があろうとも、横領が犯罪であることは変わりがない。むしろ、それが原因で離婚や親族の破産にまで至ることもありうる。

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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