「家族のため」の不正は結局家族を不幸にする
私生活も絡んで生じる「カネが欲しい」という欲求を、会社が抑え込む方法はない。採用面接で見破るのも難しいし、従業員のプライベートな時間を完全に把握することもできない。ただし、カネに関わる仕事をさせている従業員の服装や言動に怪しい予兆が見えたときには、注意してチェックするといった対策は可能だ。
また、最近増えているのは、遊ぶカネ欲しさではなく「生活費に困って」横領するケースである。給料やボーナスがカットされたり、家族の大病などで急な出費が増えたり、リストラに遭ってしまったために、住宅ローンの返済に困り、不正に手を染めるパターンである。
「もし自分がやらなければ、愛する家族が住む場所を奪われる」
という切迫感は、横領の動機になると同時に「大切な人を守るためには仕方がない」という正当化にも結びつく。家族思いの心や責任感が追いつめた行為ということになるだろう。
しかし残念ながら、どんな理由があろうとも、横領が犯罪であることは変わりがない。むしろ、それが原因で離婚や親族の破産にまで至ることもありうる。