先進国では思いもよらない製品が重宝される
もちろん、商売は現地人相手にも行います。人口が多く経済成長中の途上国では、現地人向けの大ヒット商品を作れば、非常に大きなマーケットを手にすることができます。
例えば、インドの家電量販店に行くと、韓国メーカー製の冷蔵庫に鍵穴がついていることに気付きます。インドではお手伝いさんを雇うことが多いのですが、彼女たちは非常に貧しく、雇い主の食料を盗むことがしばしばあります。これを防ぐために、冷蔵庫にも鍵が必要なのです。
この発想は先進国の人間、特にお手伝いさんを雇う文化があまりない日本人には思いつきにくいものです。おそらく韓国人にとっても同じでしょうが、現地の文化を研究してニーズを拾い上げ、画期的な製品を送り出すことで大きなシェアをとることができたわけです。
さて、冒頭の共用テレビについている「音量最大化ボタン」は、どんなときに使われるのか。屋外同然の場所でテレビを見ていると、路上をトラックが走ったり子どもが大騒ぎしたりするので、ドラマやスポーツのクライマックスで音声が聞こえなくなってしまいます。
そんな時、店の主人がリモコンのこのボタンを押すのです。押している間だけ音量がマックスになり、トラックの轟音にも負けません。こんな機能、先進国の集合住宅で使われたら大迷惑ですよね。
「アンコールクッキー」と「音量最大化ボタン」に共通しているのは、それを買う人の立場に立って、必要とされている商品を作り上げたこと。お客さんを想定し、彼らが何を求めているかを徹底的に調査・考察し、それを形にする。製品開発の基本ですが、それを愚直に行った結果、多くの人を喜ばせることができているのです。(森山たつを)