安定成長の時代には「長いものには巻かれろ」「事なかれの減点方式」が一般的だった。しかし不況下では、目ぼしい成果を上げることができなければ会社にいられない。目の前の仕事をこなしているだけでは、組織から必要とされなくなってしまう。
経営コンサルタントの高城幸司氏は、「淡々とした日々の仕事ばかり選んで過ごしていては得られない何か」を得るために、ときには「火中の栗」を自ら拾いに行くことも必要だという。ただし「栗」の選び方にはコツがあるそうだ。
「レバレッジが利く拾い方」を心がければうまくいく
――現代のサラリーマンは、さまざまなリスクと隣り合わせです。自分が「ここなら安全」と思っていた職場も、急激な変化によって、あっという間に居心地が悪くなってしまうことも当たり前になってきました。自分の居場所は自分で見つける勇気を持つべきです。
異動先としては、「火中の栗を拾う」役割も考えられます。もちろん、すべでの栗を拾うことを勧めているのではありません。あくまで、あなたが拾うことで成果が出る可能性が高いというのが前提です。
私は、「その栗が問題児であればあるほど、レバレッジが利く、おいしい仕事」と考えています。ここで言う「問題児」とは、ボストン・コンサルティング・グループが考案したPPMと呼ばれる4つのマトリックスの1つです。
縦軸に市場成長率、横軸に自社シェアを取ったマトリックスを作り、事業を4つの象限に分類します。
(1) 花形事業 大きな利益を得られる一方で、投資が必要な事業
(2) 金のなる木 利益は得られるが、市場成長率は期待できない事業
(3) 問題児 何らかの理由で花形になり切れない事業
(4) 負け犬 利益が少なく、成長性も低い事業
市場の成長率は高いものの、自社シェアが低いのが「問題児」です。新規参入事業は当初、「問題児」になるのが普通です。「問題児」であれば、努力して頑張ったあと、おいしい仕事が待っているかもしれません。反対に「負け犬」であれば、いくら頑張ったとしても努力が報われない。そうです、ここに見極めのポイントがあるのです――
(高城幸司著『火中の栗の拾い方』日経プレミアシリーズ、173~178頁より)
(会社ウォッチ編集部のひとこと)
「火中の栗を拾う」という言葉は、ラ・ロシュフコーの寓話によるという。「ずるい猿におだてられた猫が、囲炉裏の中で焼けている栗を拾ったが、栗は猿が食べてしまい、猫はやけどをしたたけだった」というお話だ。したがって本来は、「危険を知らず」「そそのかされて」「相手の利益のために」行う愚かな行為を指す。
著者はこの言葉を「危険とわかっていて」「自らの意思で」「公衆の利益のために」勇気を持ってする行為という意味に捉えることで、「火中の栗は三文の得」にしようという。ただし、「黒焦げになった栗は拾わない」「次につながる可能性を探りながら拾う」といったコツがあるようだ。ピンチの中にチャンスを見出す発想といえるかもしれない。