アニメには、マンガや小説、ゲームなどの「原作」のあるものとないものがあります。後者を「オリジナル作品」といいますが、同じアニメでも原作つきとはまたちがう種類の苦しみがあります。
世界観はイチからつくり上げなければなりませんし、ストーリーもデザインも集団作業では行き違いが起きやすく、一筋縄ではいきません。新しい製品やシステムを立ち上げるときには似たようなことが起きますが、アニメも同じなのです。
知られざる「オリジナルアニメ」の骨格つくり
アニメ制作は、基本的にはプロット開発から始まります。プロットとは簡単にいえば筋書きで、アニメの骨組みとなるものです。ストーリーやキャラは、その骨格にのせる筋肉といえます。
原作つきの場合にはある程度の筋骨格ができているため、体型が大きく変わることはありません。作業も計画的に進みやすいものです。今年3月に放送予定のNHK「大人女子アニメ」を担当したときには、原作の角田光代さんの小説をもとにキャラクターをデザインしました。
しかし、イチからプロットを開発するときには七転八倒の連続です。シリーズ全体のあらすじや世界観、美術デザイン、主要キャラクターを決め、毎週ゲストキャラや各話の美術設定、ストーリー展開なども創りださなくてはなりません。これらは、監督とライターの手に委ねられています。
「オリジナルは自由に作れるからいいよね」なんて言われることもありますが、「自由ほど不自由なことはない!」と思わずつぶやく監督もいます。そして、毎回決めることは盛りだくさんなのに、時間は原作つきと変わらないことが多い。
こんなときに一番コワイのは、監督やライターのアイデアが行き詰まること。いわゆるスランプです。締め切りは迫っているのに、シナリオ以降のすべての作業が止まります。プロデューサーは「アイデアが降りてきますように!」と祈るように叫び、頭の中には「放送落ちフラグ」が立ち、スタッフの心拍数と血圧は急上昇します。
そしてこんなとき、監督からデザイナーに緊急オーダーが発注されることがあります。
「明日までにキャラのラフ、いくつか描いてもらえます?」