月給1万円のカンボジア人が「日本語入力」 日本人に残された仕事はあるのか?

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   ひと月ほど前にアジア各国を回って、現地で働いている人や起業している人たちと会ってきました。彼らは口々に「大変だけど、楽しい!」と言っていました。実際、彼らの顔はイキイキしていました。

   そして、日本に帰ってきて、今度は就職活動に苦労している学生や社会人に会いました。「いや、ホント、大変ですよ」。確かにその大変さが顔に表れていました。日本で普通に生活したいだけなのに、なぜこんなに大変なんだろう?

   「海外就職研究家」の私が言うのもなんですが、日本国内で楽しくイキイキとできる仕事がたくさんあったら、わざわざ海外に行く必要もないでしょう。でも、そうもいかないから、いろんな選択肢を検討している人が多くなっていると思うのです。

同じことしかできないなら仕事は安い方に流れる

バンコクの店頭で居眠りする店員サン。東南アジアには「勤勉でない人」もたくさんいます
バンコクの店頭で居眠りする店員サン。東南アジアには「勤勉でない人」もたくさんいます

   日本で普通の生活が難しくなっている理由は、東南アジアを歩くとすぐに分かります。先進国の人が貧しくなっている代わりに、途上国の人が豊かになっているからです。

   今回、カンボジアで衝撃的な光景を見ました。10年前に日本人のアルバイトがやっていた文字データ入力の仕事を、カンボジア人が行っていたのです。

   日本語が分かる人は少ないのに、なぜそれが可能なのか。それは、マウスでできる画像データの修正と、アルファベットの入力作業のみ行っているからです。その作業が終わると、次工程の中国やタイにデータを飛ばしていました。

   日本人がインターネットで送った元データを、カンボジア人が一次加工し、中国人やタイ人が完成データにして日本の顧客に戻してくる。データの移動コストは、金額・時間共にほぼゼロです。

「日本語が話せるタイ人が月給5万円でこれだけ仕事をしてくれるのに、日本人に20万円払う必要はどこにもないよね?」

   こう言うと、「日本は生活費が高いんだから仕方ないだろ!」と反論がきます。確かにその通りなのですが、そんな個人の事情とは関係なく、仕事は無情にも月給5万円の人のところに流れていきます。

   そうやって、月給20万円の日本人の給料は少しずつ下がり、月給5万円の日本語が使えるタイ人の給料は少しずつ上がる。そしてタイ人の仕事も、少しずつ月給1万円のカンボジアに流れていくのです。

「仕組みを作って回す仕事」ができれば共存共栄

   先進国の国内格差は広がっているといわれますが、世界全体から見ると格差が縮まっているともいえます。途上国の貧困層と、先進国の中流層の格差が縮まっているのです。そんなフラットな世界で、どうやって生き延びていけばいいのか。

   タイ人が5万円もらえているのは、1万円のカンボジア人にはない「日本語入力」の技能を持っているから。高い給料をもらうためには、それに見合うだけの技術が求められます。我々が月に20万円、30万円稼ぐためには、「日本語が使えるタイ人」の何倍もの利益を生み出す技術が必要になるのです。

   例えば、カンボジアにデータ加工の仕事を発注しているのは、他でもない日本人です。ひとつの仕事を複数工程に分割し、タイ人やカンボジア人に効率的に振り分ける仕組みを作ることで、低コストで制作する方法を編み出したわけです。

   この仕組みは会社に毎月何百万円もの利益をもたらすので、仕組みを作って維持管理する人は数十万円の給料をもらえる価値があります。

   我々日本人が考える「普通の生活」は、世界からしてみたら「あこがれの生活」であり、世界中の人から狙われている特権階級の生活です。そのポストを守りながら、他人を幸せにする道はないのか。私は、あると考えています。

   日本が仕組みを作り海外に発注している仕事が、多くのカンボジア人の生活を豊かにしているように、日本人の技術や知恵をアジアに展開すれば、世界のもっとたくさんの人を幸せにし、我々の生活も豊かにできるものだと信じています。(森山たつを)

将来、海外アジアで働く可能性はありそうですか?
ぜひ働きに行きたい
できればいつか働きたい
そうせざるを得ないかも
絶対に行きたくない
森山たつを
海外就職研究家。米系IT企業に7年、日系大手製造業に2年勤務後、ビジネスクラスで1年間世界一周の旅に出る。帰国して日系IT企業で2年勤務後、アジア7か国で就職活動をした経験から「アジア海外就職」を多くの人と伝えている。著書に「アジア転職読本」(翔泳社)「はじめてのアジア海外就職」(さんこう社)がある。また、電子書籍「ビジネスクラスのバックパッカー もりぞお世界一周紀行」を連続刊行中。ツイッター @mota2008Google+、ブログ「もりぞお海外研究所
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