人材コンサルタントの常見陽平氏によると、ソーシャルメディアの普及で「意識の高い人(笑)」が可視化されているという。本来はよい意味で使われていた「意識の高さ」が空回りして、地道になすべきことをおろそかにしたり、下積み仕事で力をつけようとする人をバカにする様子が目に余るのだそうだ。
中でも、ビジネス書のマーケティング手法として開発された「自分のプロフィールを誇張する手法」をマネる就活生は、実力と「意識」の乖離が大きすぎて逆効果になっていると指摘する。企業の採用担当者も過剰な自己演出をする学生に嫌気がさしており、背伸びもホドホドにしておいた方がよさそうだ。
社名を隠し「上場企業出身」と表記する理由
――皆さんは、ビジネス書の著者や、ソーシャルメディア上でちょっと目立っている人のプロフィール情報を見て、「痛い」とか「かっこよすぎる」と思うことはないだろうか。私は、ある。なんせ「盛り」すぎ、つまり誇張しすぎなのだ。
この手の経歴を見ていて面白いのは、自慢できる経歴とそうじゃない経歴があることだ。例えば、学歴である。これは自慢できる場合は徹底的に自慢し、あまり自慢できない場合はできるだけぼかすものである。
日東駒専、大東亜帝国は全国的には知名度があるし、大学が約780校ある現在では相当有名な方なのだが、出さないケースが多くなる。表記する場合は、愛校心が強いパターンも多いが、「自分は一流の大学を出たわけではないのに成功した」という「雑草アピール」にも使われる。
職歴もそうだ。有名企業出身者はドヤ顔で表記することが多い。大手企業の場合は特にそうだ。さらに言うと、ここでも技があって、全国的に知名度の低い企業の場合でも、上場している場合は社名を隠して「東証一部上場企業勤務」「上場企業出身」などとあえて表記する。
もうひとつ、著者がよく使う手法がある。それは「コンプレックスをさらけ出すことにより共感を得る」というものである。
「幼い頃から親の暴力を受けて育つ」
「会社が倒産し借金を背負う」
「就活に失敗し、フリーターとして職を転々とする」
「劇的にモテず、彼女いない歴=年齢」
「成功を夢見て起業を繰り返すも失敗に終わる」
「この人、苦労しているだろうなあ」「成功者に見えるけど、大変だったんだなあ」「オレと境遇、一緒だ」などと思わせ、共感を得るわけである。このように、ビジネス書の著者がやっても意識が高すぎて香ばしい行為を、一般人がソーシャルメディアなどのプロフィールに書いているのだから、タチが悪い。
(常見陽平『「意識高い系」という病』ベスト新書、57~61頁)
(会社ウォッチ編集部のひとこと)
常見氏の「意識の高い人(笑)」批判は、これにとどまらない。瞬間風速的な実績だけ取り出して誇示する人や、肩書きばかりに凝る人、詐欺のような加工写真を使う人、名刺交換だけで親しいと詐称する人脈自慢、SNSのフォロワーや友達の数自慢、学生団体の立ち上げやイベント集客自慢、出版・メディア露出自慢など…。
人生を一発逆転したい人が集まる出版塾でも、原稿を書く前にプロフィール講座でセルフブランディング用の経歴や肩書きを整え、磨き上げるのだそうだ。自分が変わりたい衝動、世の中を変えたい衝動を持つ「真に意識の高い人たち」には共感する。しかし、そのために人を騙し、見下し、利用するような「意識の高い人(笑)」とは徹底して闘うというのが常見氏の主張だ。要するに実力もないのに「有名人」になりたくて虚勢を張っても、みっともないだけということだろう。