アニメ監督のトホホな日々 「あちらを立てればこちらが立たず…」

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三角波を超えてアニメ監督は「お宝」を目指す!

   千葉の銚子沖は豊かな漁場として有名ですが、太平洋と大利根川の水流がぶつかる地点ということでも知られています。船長はこの三角波をのりこえ必死に舵を操り、果敢に漁に出て漁船を無事に港へと戻します。

   水流がぶつかるからこそ、おいしい魚がたくさん獲れる。荒くれクルーとともに激しい三角波に立ち向かい、「面白いアニメ」というお宝を目指すのがアニメ監督です。

   フィルムづくりという航海は決して楽しいことばかりではありません。ときには鮫に足を食いちぎられそうになったり、仲間から刺されそうになることもないわけではない。

   「よっ、船長!」と持ち上げられることもありますが、実際のアニメ監督はそんなカッコイイものではなく、心の中ではトホホな日々を送っているわけです。それでもなお「お宝」には魅力があるし、航海をやめようと思わないのも監督です。

「なあ、ジム。どっかでオレが、オレの一番大切なものってやつに出会うときがあるよな?」

   これはアニメ『宝島』最終回で、海賊ジョン・シルバーがジムに言うセリフです。まさにアニメ監督も、そんな「一番大切なもの」を目指して何度でも無謀な冒険に出るジョン・シルバーなのかも知れません。(数井浩子)

数井浩子(かずい・ひろこ)
アニメーター、演出家。『忍たま乱太郎』『ポケットモンスター』『らんま1/2』『ケロロ軍曹』をはじめ200作品以上のアニメの作画・演出・脚本などに携わる。『ふしぎ星の☆ふたご姫』ではキャラクターデザインを担当した。仕事のかたわら、東京大学大学院教育学研究科博士後期課程に在籍。専門は認知心理学
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