一般的な企業イメージより「生活者の話題性」を優先
田中久重とは、江戸時代から明治時代に活躍した発明家。彼が創業した芝浦製作所は、後に東芝の重電部門に発展していった。東芝の企業サイトには「東芝のルーツ・田中久重ものがたり」というコーナーがある。
もしも「デジタル貸金庫」の機能を直接訴求しようとしても、ターゲットである生活者には届かない。高額な最終製品でもないので、有名タレントを使ったプロモーションもできない。しかし、クリスマスという時期に合わせたネットの話題性をねらった企画であれば、理にかなっていることになる。
とはいえ、単なる遊び心だけでは企画は通らない。社内を説得するプロセスにおいては、桑原氏も「ターゲット、商品性、話題性を検討し、あくまで論理的に説明しています。周りから見れば、ただ好きなことやっているように見えるのが辛いところですが…」となかなか苦労しているようだ。
そんな企画が功を奏し、「15minute LOVE」は1か月で20万超のサイト来訪者があった。15分間以上のサイト滞在者も3割以上と、ねらいどおりの効果だ。ただ、ネット掲示板などに批判的なコメントがあがったという。
「東芝の企業イメージとのギャップがあるがゆえのコメントも多かったです。担当者としては正直胃が痛みますが、いろいろな意見を受け止めながら、まったく話題にならないよりはよいと思うようにしています」
企業イメージの「らしさ」にこだわって堅持するか、目的達成のためにそれを崩す企画を許容するのか。大企業のプロモーション担当には頭の痛い悩みだが、果敢に後者を選んだ東芝のチャレンジ精神に敬意を表したい。(岡 徳之)