あるイギリスの雑誌記事によると、人は平均で1日に10分、一生に153日分もの時間を「モノを探すこと」に費やしているのだとか。貴重な人生をこんなことに使っているなんて、本当にもったいない話です。
探し物をしないためには、机をきれいにしておくことが考えられますが、前回書いたように整理整頓には深刻なデメリットがあることも事実。そこで今回は、先輩アニメーターも実践している「片づけないけど探し物もしないで済む方法」をご紹介したいと思います。
なかなか出てこないときには「探さないのが一番」
仕事をしている最中に、仕事道具が行方不明になり、「仕事中断」→「探す」→「見つかる」→「仕事再開」→「別の道具が行方不明」という不毛なサイクルに陥るのはよくあること。そのストレスは相当なものです。
アニメーターの机で行方不明になるものナンバーワンは、定規です。30センチの直定規から三角定規、分度器、円定規などのテンプレート類など、仕事中にとにかくすぐに見当たらなくなります。しかも「いま必要!」というときほど見つかりません。
定規の特徴は、その薄さ。コンパクトな文房具なので、いつの間にかに資料の中に入り込み、しかもいったん紛れると見つけにくい。アナログのアニメーターにとって、定規は身体の一部。それが機能停止になっては、おおいに仕事に差し支えるわけです。
「探しモノは、探しているうちには絶対に出てこない」
とは、よく言われること。ならば、探さないのが一番の対策になります。そこで先輩アニメーターが採用しているのは「超スペア主義」。愛称「イカタコ作戦」です。
どこに手を伸ばしても欲しいものが届くよう、同じものをいくつも買って、あちらこちらに配置しておく。これでモノを探す時間は、飛躍的にググッと短縮できます。
整理整頓のできるビジネスパーソンの皆さんからは「アホか?」と言われそうですが、きわめて単純なこの方法、実に即効かつ効果テキメンなのです。イカタコしておくだけで、モノを探す時間もストレスもゼロ。数百円のスペアをいくつか買っておくだけで、仕事がサクサク進むのですから安いものです。
「3色ボールペンを10本」の編集者もいた
この「イカタコ作戦」、先日会った知人の編集者も似た方法を実践していました。彼は、取材や企画のメモ、ゲラへの朱入れなどに「3色ボールペン」を愛用しており、これがないことにはまるで仕事にならないのだそうです。
彼は同じものを10数本購入し、カバンやジャケットなどに常に潜ませています。おかげで思い立ったときには、いつでも仕事ができる万全の体制が整っていました。普通のビジネスパーソンにも意外と「イカタコ作戦」は応用できるのでは、と思った瞬間でした。
この連載の編集者も、自前で決まったボールペンを大量に買っていて、それしか使わないのだとか。「海外のブランド品より、日本の文具メーカーの製品の方が安くてずっと性能がいい」のだそうです。
前回の記事には、「片づけができないのは仕事ができない人」というコメントもいただきました。確かに、整理整頓はヒトとして大事だと思います。しかし机や鞄の「探し物ゲーム」が常態化しているのなら、自分に合った対策を考えてもいいのではないでしょうか。
私も先輩にならって同じ定規を5本買って使っていますが、モノを探すストレスが激減し、仕事の効率があがりました。仕事道具の一点豪華主義もいいですが、探し物の多い方には今回の「イカタコ作戦」、定番品のスペアをたくさん揃える方法もアリかもしれません。(数井浩子)