「まかない料理」は人材育成の場 厳しい先輩の舌が創意工夫をうながす

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好評ならお客さま用メニューに発展するチャンスも

仕事への熱意を語るシェフの話に引き込まれる参加者たち
仕事への熱意を語るシェフの話に引き込まれる参加者たち

   その経験以来、まかない料理といえども隅々まで気を抜かず、中途半端なものを出さないこと、まずい理由を聞いたらすぐに作り直してみること、先輩のまかないを真似てみることなどを強く心がけるようになったという。

   スタッフは全員「食のプロ」だからこそ、忌憚のない意見を聞くことができる。料理人にとって欠かせない実践と勉強の機会だ。

「一緒に働くスタッフからも『これはおいしい』『いいアイデアだ』と言ってもらうことが、働くモチベーションを高めてくれるのです」(佐藤シェフ)

   作ったまかないが人気を得て定番化すると、お客さま用のメニューに発展することもある。試行錯誤の結果が新メニューとしてお店で出されるのは、料理人として大きな喜びとなるだろう。まかない料理は、飛躍へのチャンスでもあるのだ。

   ツアーには、定員10人に対し2890人もの応募があった。運よく当選した女性たちから「おいしいわ」と声があがるたび、佐藤シェフは嬉しそうな顔をしていた。自分の仕事に対して感謝されるとき、働き手は大きな喜びを感じられる。これも厳しい修業の成果だ。

   仕事にはお客さまだけでなく、同僚や取引先がつきものだ。そういう人たちの厳しい目にさらされながら失敗したり成功したりすることで、人は成長して実力をつけていく。そして、先輩たちから学んだことを後輩たちに伝えていくのだ。まかない料理の向こうに、そんな人のつながりを見た気がした。(池田園子

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