今春の新入社員(新卒正社員)へのアンケートによると、今の会社で「定年まで働きたい」と答えた人が34.3%と過去最高になったという。就職氷河期で入社に苦労した分、安定した雇用を求めたい気持ちがあるのだろう。
とはいえ、「定年をなくして一生働ける」という制度には、すべての社員が歓迎するわけではないようだ。ある会社で社長が「定年廃止」を提案したところ、意外にも反対の声が少なくなかったという。
「早くポスト空けてくれないとやる気出ない」
――製造業の人事です。最近、若手社員の離職率が高くなり、人材がなかなか定着しません。定年退職による自然減と合わせて、社員の減少傾向が続いています。
中途採用を通年で行うようにしましたが、間に合いません。そこで社長が、やる気や能力のある人には定年後も引き続き働いてもらうことを提案しました。
「だいたい若いもんは仕事そっちのけで、プライベートにばかり頭が行っている。その点、ベテラン社員は仕事に集中してくれるし、年季を経て熟練する部分もある。いっそのこと60歳定年制を廃止しちゃうのはどうだろう。年金の支給年齢も上がっていることだし」
そこで役員や管理職、社員にヒアリングを行いました。社員の中には「まさに終身雇用だ」「これで安心して働ける」と歓迎する声もありましたが、30~40代の社員たちから意外な反対の声があがりました。
「勤続年数が長いから仕事ができるというわけでもない。絶対反対です」
「定年がないと組織の新陳代謝が悪くなる。早くポストを空けてもらわないと、我々だってやる気が起きませんよ!」
とはいえ、今後は生産年齢人口が減るのは確かだし、高齢者が元気なうちは世の中のために働くこと自体は悪いことではないと思うのですが。ここは多少強引でも、会社の方針をトップダウンで展開していいのものでしょうか――