東北の被災地も東南アジアも「7時間」あれば行ける
深夜、東京から車を走らせて7時間。遅まきながら訪れた東北の地にあったのは、想像以上の世界でした。鉄骨だけ残った庁舎、地上に打ち上げられた巨大な船舶、住宅の残骸、何もない原っぱ――。
恥ずかしながら、テレビや写真で見ていた光景が実在するものだと実感した瞬間です。津波で押し流された一帯と道を一本隔てたところに、無傷の住宅地があります。テレビカメラでは、そういう「まだら」な様子をすべてカバーすることはできません。
これは、ジャカルタをどう捉えるかにも似ています。ピカピカのスポットの脇に、昔ながらの古い長屋が軒を並べている。「これがジャカルタだ」と一部を分かりやすく切り取っても、それですべてを言い表すことはできないのです。
被災地にも、広大ながれきの山のそばに、そこで困ってうずくまっている人、何とか店を開いて経営している人、何もないところに新しいものを作り出そうと希望を持って立ち向かっている人など、さまざまな人たちがいます。そんな様子を見ると、自然と「自分に何かできないか」「こんな関わり方ならできそうだ」という思いが起こってきます。
ふと考えると、東南アジアの各都市は、成田から飛行機で7時間くらいで行けます。決して短い時間ではありませんが、なんとかすれば誰もが捻出できる時間ではないでしょうか。
東北の被災地もジャカルタも、一度訪れてみることで「想像上の遠い場所」から「自分たちと同じ人間が生活している街」と認識が変わります。そうすれば、その後のニュースの見え方も変わってきますよ。(森山たつを)