「用語が分からないから…」 ITを使えない人が増えている

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「おい、スマホのアプリとパソコンのアプリケーションソフトとは、どう違うんだ?」

   ネット系企業に勤めるアラサー女子A子さんは、ある日曜日、60代の父親からいきなりこう訊かれて、一瞬面食らいました。

「私なんかだと、スマホのアプリとパソコンのアプリが『どう違うものか』なんて、発想がそもそもない(笑)。要は、機能を追加するものだから一緒よ、って答えたんですけどね」

   お父さんからすれば、アプリケーションソフトとは文書を作成したり、画像を加工したりと能動的な作業に使う道具のようなイメージがあり、ゲームや音楽を聴くといったエンターテイメント方面のものが同じ分類だということに、ピンときていなかったようです。

「言葉が分からないから説明も理解できない」

「机の引き出しには電卓もノートもトランプも入れるでしょ、机は仕事にも遊びにも使うでしょ、って言ったら分かってくれたようで。そんな話を同僚や友人としていたら、似たようなエピソードが結構あったんですよ」

   App storeとアップルストアとは同じものなのか、と訊ねてきた50代のサラリーマン。パソコンやスマートフォン関連の話のなかで「デリって」とよく聞くが、あの「デリ」の意味は何なのかと真顔で訊いていた中年の女性。

   ニュースで見かけるが「テザリング」や「リッピング」という用語が何のことか分からない、といったものまで含めると、かなりの数が上がったとか。

   初歩と言えば初歩ですが、分かっていないと話が進みにくい用語の数々。ここで躓くというのは、別の人からも聞いたことがありました。

   近所でたびたび顔を会わせる、60代の現役社会人Bさんです。これまでパソコンやネットとはまるで無縁な生活を送っていたのですが、突然興味がわいたとかで、今年の初めから町場のパソコン教室に通っています。

「ぼくが行っているのは、いまさら聞けないパソコンの初歩から表計算ソフトをスラスラ扱えるようになるまで、なんて銘打ったチケット制の講座なのね。ところが、このところ説明書や同意画面などに書いてある用語が分からないとか、パソコンをうまく終了できないとか、続けて通うほどじゃないんだけど、専門の人に直接教えてもらい、やって見せてもらわないと自分ではどうにもできない、分からないって問い合わせが増えてるんだって」

自分から興味を持って使ってみるしかコツはない

   電話で言われてもダメで、その場で対面しつつ教えてもらわないと頭に入らない。そうしたことは、たしかにあります。

「加えて、最近ではスマホ関連の質問が多い。そこで60分とか90分で1回だけのIT悩み相談講座みたいなのをつくったら、これが中高年から好評らしくてさ」

   独立系のケータイ/スマホショップだと、買ったその場で2時間、「分からないことを分かるまで説明します」というサービスを売りにしているところも登場していると聞きました。

   パソコン+ネットからケータイへ、そしてスマートフォンへと、端末の主流が移り行くなかで、慣れていない人にすれば悩みのタネとなる新しい「用語」。筆者も、今の仕事を始めたての頃、取材のなかで「ストリーミング」と言われて、何のこっちゃサッパリだったことを思い出します。

   とはいえ、マルウェアを「悪意のあるソフトウェア一般のこと」と言い換えられても、かえって難しい。

   Gmailのようなウェブメールを日本語で分かりやすくとリクエストされて、最終的に「メールソフトを使わずに、インターネット上でブラウザを利用して提供されるメールをやり取りするサービス」と、自分で言っていても分かったような、分からないような、イライラする言い方になりました。

   ですので、とりわけアシの速いIT・ネット系の用語や流行については、習うより慣れろという部分もありますが、それでも分かっていないと気色が悪いという人も多いでしょう。

   そこでコツですが、スマートフォンやネットに対して、今までよりちょっと興味を持って使う、教えてもらうということに尽きます。興味のないことは、やはり、いくらプロに習っても身に付きません。スポーツや芸能と同じことです。(井上トシユキ)

井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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