就職難の昨今、「何かしら資格があれば、仕事に就きやすくなる」と言われることがある。しかし、せっかく苦労して取った資格でも、仕事にマッチしなければ、職場になかなか受け入れられない。
一方、仕事に合った資格であっても、誰でも取れるものなら、会社からあまり重宝されない。難関かつ具体的な仕事に強力に結びついている資格があれば、かなり苦労して取る意味もあるだろう。
そんな条件を満たす資格のひとつに、「アクチュアリー」があるという。ひとことでいうと「確率・統計などの手法を用いて不確定な事象を扱う数理のプロフェッショナル」。資格取得者は国内で1300人ほどしかいない狭き門だ。
数理系の素養が生きる。企業間で引き抜き競争も
日本では聞きなれないアクチュアリーだが、米国では「有望な資格」としてよく知られているようだ。米キャリアキャストの「The 10 Best Jobs of 2010」の第1位、2012年版でも第2位となっている。
快適な労働環境で働くことができて、身体的・精神的ストレスも比較的少ない。収入も高く、転職見通しも申し分ないという評価をされている。
どんな人がアクチュアリーの資格を取っているのか。自身も資格保有者であるオリックス生命の経営企画部長、加藤貴久氏に話を聞いた。
「生命保険会社で働くアクチュアリーが多いですね。死亡率など過去の実績から将来の見通しを立て、保険商品の開発や企業経営につなげる仕事に就く場合が多いです。損害保険会社で働いたり、信託銀行の年金業務に携わる人もいます」
オリックス生命に勤める日本アクチュアリー会の正会員は、現在3人。経営企画部長のほか、保険業に欠かせない「保険計理人」を兼務する統合リスク管理部長、それに商品開発部の課長だ。加藤氏も商品開発部の出身である。
資格取得者のほとんどは、大学で数学を専攻した人たち。これまでは教職や研究者を選ぶことが多かったが、少子化による就職先の減少が見込まれる中、数理系の素養を生かしてアクチュアリーの資格に注目する人が増えているという。
「少子高齢化や国際化など社会が大きく変わろうとしている今、アクチュアリーの需要は非常に高まっています。すでにいろいろな会社が引き抜きをしたがっているようですし、弊社でも今後ぜひ増やしていきたいところです」