社会保険労務士・野崎大輔の視点
労基署はパワハラ相談を受けないが人事は警戒が必要
労働基準監督署がパワハラ相談に乗ってくれるかどうかについて、担当者に問い合わせてみましたが、具体的な解決に向けて介入することはなく、是正を指示するなどの強制力はないようです。労基署は「労働基準法に定められた監督行政機関」であり、労基法にはパワハラに関する条文がないからです。パワハラが精神疾患や労使トラブルにつながるケースが多いことから、アドバイスという形での助言指導はするようですが、社員が相談する効果は限定的といってもいいでしょう。
労基署のアドバイスでも会社が改善せず、本人が納得できなければ、労働局に問題解決のあっせんを申請するか、裁判に訴えることになります。そうなっては会社も困るので、人事がパワハラに当たるかどうか判断し、必要に応じて当事者に指導する必要があるのではないでしょうか。ただし、ハラスメント行為が傷害罪や名誉毀損罪など刑法に抵触するような場合は、本人が警察に届けても仕方ありません。
(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。