臨床心理士・尾崎健一の視点
まずはAさんの「気持ち」に沿って耳を傾ける
上司の言動は、厚生労働省の「職場のパワーハラスメントの行為類型」の「過大な要求」に当たるおそれがありますが、「業務の適正な範囲を超えて」行われたかどうかは判断が難しいところです。まずは双方から話を聴くことから始めるべきでしょう。
パワハラが社外に出るトラブルに発展するパターンは、だいたい決まっています。会社に相談したものの、「その程度は仕事につきものだ」と突っぱねられて腹を立て、「まともに取り合わないひどい会社は訴えられて当然」となるわけです。相談を受けた人事は、Aさんが訴える気持ちに耳を傾け、いったん受け入れましょう。「上司はそんなつもりじゃないでしょう?」などと言うことは、Aさんの感情を否定することになりかねません。もちろん、上司にも言い分があるはずなので公平に聞き取ります。このプロセスの中で「どちらが悪人か」を判断する前に、お互いの誤解や言いすぎに気づくこともあり、今後の仕事のあり方について話し合えば済むケースも多いものです。