花巻東高校の大谷翔平投手が、メジャーリーグへの挑戦を表明したそうです。
海外のレベルの高い場所に挑戦する選手が増えることで、日本代表チームの底上げがなされているのはサッカーでも実証済。彼の挑戦は一野球ファンとして、大いに応援したいと思います。しかし、自分だったら高校卒業後すぐに渡米するかな?という疑問は感じます。
「日本人」というだけでチャンスが多い現状の日本野球
日本のプロ野球から渡米した選手の成績からも分かるとおり、メジャーリーグの方がレベルが高く、競争ははるかに厳しいです。高校を卒業して即メジャーに上がる選手は皆無で、マイナーリーグで実力をつけ、何年もかけて上を目指す形になります。
一方、日本のプロ野球の場合、ダルビッシュ有投手や田中将大投手のように高卒1、2年目で先発ローテーション入りして活躍する選手もいます。その間にも給料は上がるので、少なくとも最初の5年間の稼ぎという点では日本の方が有利になる可能性が高いです。
与えられるチャンスの量や生活面の環境も、日本の一軍の方が米マイナーより恵まれているでしょう。なぜこのような違いがあるかといえば、日本では「日本人である」というだけで、外国人選手よりも機会が与えられやすいからです。
日本のプロ野球には外国人枠があり、試合に出場できるのは4人までです(投手2人、野手2人。FA資格取得者は除く)。つまり、外国人であるというだけで出場機会が激減する、日本人にとって有利な場所なのです。
だったら、この有利な場所でFA権を獲得する前後までプレーして、充分な実績を積み、その後メジャーに挑戦したダルビッシュ投手のようなキャリアを目指す方がいいのではないかと思ってしまうわけです。
日本人が海外で働くときも、この日米のプロ野球リーグと同じことが言えます。
真のエリートでなければグローバル企業は厳しい
日本国内の日本企業で働く場合、日本人であることが圧倒的に有利です。最近は留学生を採用する会社も増えていますが、社内公用語はほとんどの会社が日本語。外国人枠は圧倒的に小さいです。
新卒で入社した場合は研修などの環境もよく、成長の機会が与えられる確率は高いです。ただし、ブラック企業のような会社もありますし、日本企業の独自文化で潰される可能性もあります。
これに対し、欧米先進国のグローバル企業で働く場合は、日本人であることが有利に働くことはあまりありません。自国民有利か、国籍関係なくフラットな中での競争という形になります。
実力があればチャンスが与えられ、非常に高い報酬を望めますが、うまくいかない場合は非常に厳しい戦いを強いられ、場合によっては解雇に至ります。
自分が、世界中どこでも通用する実力があり、その実力を早く世界の表舞台で試して見たいのであれば、若いうちに米国一流大学に留学して世界の舞台を目指すのもいいでしょう。
一方で、まずはビジネスの実力をつけたい人は、日本企業で修業を積むことも考えられます。実力がついてから海外を目指すのも、そのまま日本企業に居続けるのも自由です。
アジア海外就職は、欧米と国内の中間という位置づけです。アジアの表舞台に立ちたい人が主戦場にするもよし、うまく日本企業に入れなかったり馴染めなかったりした人が再チャレンジの場とするもよし、ということになります。
欧米と国内の中間にある「アジア海外就職」
アジア途上国の日系企業においては、日本人であることがそれなりに有利に働き、若い人でもそれなり(13~20万円)の給料をもらうことができます。現地人とは違う役割が与えられ、直接の競合とはならず独自のチャンスが与えられます。
しかし、小規模な現地の体制ですから研修などは少なく、成長の機会は自分でつかみ取っていかなくてはなりません。
とはいえ、「日本でダメだったから、とりあえず海外アジア」というだけでは必ずしもうまくいかないでしょう。海外に出てどのようにチャンスを掴むか、実力をつけるかをよく考えて行動すべきです。
私は、野球に関しては一ファンに過ぎず、大谷投手の選択をとやかくいう立場ではありません。順調に階段を駆け上がりメジャーのトップ投手になれるのか、うまくいかず不遇な野球人生になってしまうのか。将来のことは誰にも分かりません。
大切なことは、現在の状況を把握し、リスクを踏まえつつ自分で考えて選択すること。大谷投手がどのような選択をするにせよ、一ファンとして声援を送りながら注目していきたいと思います。(森山たつを)