グルメサイトで公開クレーム 店主「直接その場で言えばいいのに…」

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なんでもかんでも「ネットに上げれば正義」とは

   ランチやディナーを食べながら、スマホで料理や店の雰囲気のメモを取り、画像を撮り、余裕があれば画像に加工を加えた挙げ句、一気にSNS等に投稿するところまでやるよ――。何人かの知人から、こう聞かされました。

「へえぇ、そういうことだったの。でもさ、だからといってもさ、クレームはその場で直接言ってくれたらいいじゃない?」

   何につけ、隠蔽や秘匿は悪、情報やプロセスは公開するのが善。闇雲にそういう風潮になってますからね。彼らにとっては、ネット上に事の成り行きや画像を公開するのは、正義を行っているのと同義なんでしょう。

   オヤジさんも、美味しくつくる秘訣を訊かれて隠していると、あそこは美味いがとんでもない店だ、なんて書かれちゃうかもしれませんよ。

「マジかよ! 困った世の中になっちまったなぁ。集中してこしらえている時に、あれこれ質問されたんじゃ、ホントに困っちゃうなぁ」

   冗談です。でも、ありえないとも限りませんよ――。ああ、そうなの、と50代店主はいかにもホッとした様子で言いました。

「でもね、方法論は書いたり話したりで伝えることはできるけど、それでも言葉にできななかったり、言葉にしにくいタイミングの妙や勘所ってのがあってね。それは、本人のセンスとか修業の中身とかによるんであって。だから、方法論を公開することってのは、そんなにリスクじゃないんだよ。むしろ、風評リスクのほうがキツい。だから、気にしてイノウエさんに訊いたんだよ」

   なるほど。どれだけ便利になったところで、結局は本人次第。ベテランの職人さんに、思わぬところで良い稽古をつけていただきました。(井上トシユキ)

井上トシユキ
1964年、京都市出身。同志社大学文学部卒業(1989)。会社員を経て、1998年よりジャーナリスト、ライター。東海テレビ「ぴーかんテレビ」金曜日コメンテーター。著書は「カネと野望のインターネット10年史 IT革命の裏を紐解く」(扶桑社新書)、「2ちゃんねる宣言 挑発するメディア」(文藝春秋)など。
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