先日、NHKのニュースウォッチ9で、私が添乗員を務めた「ジャカルタ就職・視察ツアー」の模様が放送されました。タイトルは「増える世界就職 羽ばたく若者たち」でした。
いまジャカルタでは、私の本の読者やセミナー参加者が、すでに10人以上働き始めています。今回のツアーでは、彼らと日本からの参加者が仕事や生活について直接話す機会を設け、番組でも少し取り上げられていました。
物価は日本の3分の1以下、手取りはあまり変わらない
ジャカルタでは現在、多くの求人があり、日系企業向け営業や、現地人スタッフの管理業務、購買・調達業務、プロジェクトマネジメントなど様々な職種で日本人が求められています。
業種も製造業、商社、IT業界を中心に多岐に渡り、20代前半の若手から40代のマネージャ層まで、エンジニアであれば60代で就職を決めた人もいらっしゃいます。
給与面では、20代前半の若手で1700~2000USドル(14~16万円)程度。会社から運転手つきの車が提供されるのが普通なので、交通費はほぼゼロです。インドネシアの慣習により、所得税などは全て会社負担。そのまま手取りになるので、日本の正社員の初任給と大差がありません。
彼らは主に「コス」と呼ばれるワンルームのサービスアパートメントに住んでいます。外国人向けに作られたお洒落で綺麗なアパートで、光熱費、インターネット接続、フィットネスジム、メイドさんによる掃除、洗濯など全て含めて、月4~5万円程度で住めてしまいます。
携帯電話料金は月1000~2000円程度で、毎月の固定費は5万円以下。手取りから固定費を引いた可処分所得は10万円前後になります。現地の物価は日本の3分の1~4分の1程度(ランチ1食300円程度)なので、かなりリッチな生活をすることができます。
毎月5万円以上は軽く蓄えられるので、帰国にかかる費用も全く問題ありません。会社によっては年に1~2回の日本の渡航費を出してくれるところもあります。
「お金は日本にいたときよりも貯まりますね」
給料が安い代わりに、マンションを支給してくれる会社もあります。駐在員が使うような高級タワーマンションである場合が多く、プール付きマンションの高層階などということも。ある20代女性は、1人暮らしなのにベッドルームが2つもある部屋に住んでいました。ジャカルタのすばらしい夜景が広がる豪華マンションでした。
さらに、現地の人材会社から聞いた話では、30歳くらいで日系の自動車会社に勤めている女性は、月給が30万円を超えており、さらに今年は業績が抜群に良かったため、ボーナスが年間12か月分も出たそうです。
たしかに、日本国内でも業績がいいときには半年分以上出る会社もあるので、現実感のない話ではありません。彼女の年収を計算してみると、年収手取りで720万円以上。大手の自動車会社でも30歳でこれだけもらっているのは上位数%。額面的にも非常に恵まれています。
「景気のいいところで働く」ことで、このようなチャンスを掴むこともできるわけです。実際、彼らに話をしてみると、生活面で困っていることはなく、
「お金は明らかに日本にいたときよりも貯まりますね」
とのこと。強いて言えば「インドネシアの人はストッキングを履かないから、なかなか買えない」とか、そういう小さなことくらい。仕事に集中できる環境は整っているようです。
待遇面ではこのようにかなり良好ですが、もちろん仕事が楽なわけではありません。
日本的な残業文化がある会社もありますし、現地人との取引が多くインドネシア語を必死で学びながら仕事をしている人もいます。仕事柄、朝5時から仕事をしている人もいるし、社員教育がない環境で、手探りで仕事を覚えている人もいます。
恵まれた環境に感謝しながら働く若者たち
また、将来のキャリアパスについて前例がないので、自分が今後どのように仕事を続けていくのかを自分で考えていかなくてはなりません。駐在員との給与格差も気になってきます。誰もが自動車会社の女性のように高給が取れるわけではありません。
今は十分生活できているけど、将来はどうなんだろう―――。こういった迷いは日本で働いていてもあるものですが、過去の実例や周りの同じ境遇の人が極端に少ない現地採用は、孤独に自分で考えなければならないので辛いのです。
しかし、彼らと話してみて安心するのが、総じてポジティブであること。そして、今の環境に対し、謙虚に感謝をしていることです。
慣れない環境の中、失敗を繰り返しながらも少しずつ成功体験を積んでいく姿や、恵まれた環境で働けることに対し、雇い主である企業やインドネシアの社会に対して感謝している姿はすがすがしい気分にさせてくれます。
会う度に逞しくなっている彼らを見ると、「自分もやらなきゃ」というポジティブな衝動を与えてくれます。そして、こうやって若い日本人が異国の地で成功体験を積んで逞しくなっているところをみると、「日本の未来も捨てたもんじゃないぞ」と思えるわけです。(森山たつを)