中畑清監督を迎え新球団としてスタートしたものの、5年連続の最下位に沈んだ横浜DeNAベイスターズ。シーズンを終えた10月には、球団が新人選手に対して「タバコ禁止」を義務づけることを決定した。
球団が開いた禁煙セミナーでは、専門医が「最下位を脱出するためには禁煙をオススメします」というメッセージを送ったという。結果さえ出ていればタバコにまで口出しされることはなかったが、現状では受け入れざるを得ないだろう。
以前から批判されてきた「ベンチにいない選手たち」
身体が資本のアスリートがタバコを吸っていたことは意外だが、ベイスターズでは以前から選手の喫煙が問題視されていた。選手交替でベンチに下がったスタメンが、味方を応援せずに、ベンチ裏でタバコを吸いながら雑談していたという報道もあった。
他球団から移籍してきた選手から「こんなチームもあったのかと思った。試合中、ベンチにいる選手が少なすぎる。ありえないことが当たり前になっている」と呆れる声も上がっていたが、体質は親会社や監督の交代だけでは変わりきれていないようだ。
ただしタバコ禁止の対象となっているのは、チームに入ったばかりの新人のみ。他の選手たちは「禁煙を推奨」というレベルにとどまっている。悪い習慣がついてしまったベテランたちは、いまから言っても手遅れと判断したのだろう。
チームの統括本部長は、「こういうチーム状況なので、やれることはすべてやりたい」と話しているが、ネットには冷ややかな声もあがっている。
「最下位はレギュラーのせいなのに…」
「まず1軍がやめるべき。上がクサイ環境のままじゃおかしいだろ」
若手の禁煙を徹底するのは、長期的な選手育成も兼ねたものと思われるが、一般企業で「業績不振なので禁煙。ただし新人社員のみ」というお触れが出たら、その矛盾に白ける社員は多いのではないか。
社長に「ベランダで吸って」と頼んでクビになったが…
外野から「上の者が身をもって範を示せ」と批判されているベイスターズの喫煙選手だが、新人社員が社長のタバコの吸い方に注文を出してクビになった事件もあった。
保険代理店に入社したAさんは、会社で働き出してから体調を崩すようになった。症状は、セキや頭痛、吐き気など。原因は、社長が事務所内で吸うタバコだった。Aさんが、
「ベランダで吸ってもらえますか?」
と頼んだところ、社長の逆鱗に触れたようだ。社長はこの要望を聞き入れず、逆にAさんに退職を求めたという。Aさんが拒否すると、こんどは試用期間後の本採用を拒んだ。
これに不満を抱いたAさんは会社を相手取り、解雇不当を訴える裁判を起こしてこのほど勝訴が確定した。ネット上では「社長に文句言うとか立場を理解したコミュニケーション能力に欠けている」とAさんを批判する声もあるが、もはや主流派ではない。
それにしても、社員の健康を犠牲にしても止められなかったとは、社長のタバコはよほど習慣化していたのだろう。ベイスターズでも単純に禁煙を進めるのではなく、
「1軍に上がったらタバコ吸い放題」
「Aクラス入りで禁煙解除」
と逆にエサすれば、モチベーション向上につながるかもしれない。(山下真史)