全国がん(成人病)センター協議会は2012年10月23日、病院ごとのがん患者の「5年生存率」を公開した。01~03年に加盟施設の患者だった人の5年後の生存率を、5つの部位ごとに分析している。
気になるランキング上位施設は、胃がんでは大阪府立成人病センターが80.2%(平均70.4%)、乳がんでは国立がん研究センター中央病院が95.4%(同90.0%)だったという。
生存率には快癒した人のほか、現在も治療を続けている人の割合も含まれている。なお、生存率が低い病院は腕が悪いというわけでは決してなく、患者数や進行状況の違いも影響しているので、あくまでも参考資料とすべきということだ。
約款別表の「肺の悪性新生物」に含まれていた
日本人の死因のトップは「がん」。死のイメージと深く結びついてきた病気だが、およそ2人に1人が罹るといわれるようになり、早期発見、治療が進むようになった。それでも働き盛りのサラリーマンには、最も気になる病気のひとつであることには変わりがない。
たとえば、がんの中でも肺がんでは、前述の「平均生存率」は40.6%とかなり低くなっている。もしもがんで倒れてしまったら、扶養している家族の生活はどうなるのか――。「がん保険」に加入しておけば、十分な保障を受けられるのだろうか。
先日亡くなった流通ジャーナリストの金子哲雄さんは41歳の若さだったが、病名は「肺カルチノイド」という聞きなれないものだった。
ワイドショーでは分かりやすい説明のために、がんに似て非なる病気として「がんもどき」という表現を使っていたが、がん保険の保障対象から外れるのではないか。保険商品に詳しいオリックス生命ダイレクト事業部長の古屋典久氏に尋ねてみた。
「カルチノイドは、医学的にはがんそのものではありませんが、がんに似た腫瘍を指すようです。弊社のがん保険の約款の別表を確認したところ、肺カルチノイドもがんと同様に『気管支及び肺の悪性新生物』に含まれていました。したがって、肺カルチノイドに罹った場合でも、給付金等を速やかにお支払いします」
「上皮内新生物」は保障対象外となる保険もある
古屋氏によれば、保障対象を自分で確認するには、がん保険の約款だけでなく、ネットのデータベースを見る必要があるという。東京大学の「標準病名マスター作業班」というサイトで病名を検索し、それがどういう種類のものであるかを見ることができる。
「標準病名マスター病名検索」の検索窓に「カルチノイド」と入れると、食道カルチノイド、胃カルチノイド、虫垂カルチノイドなど23項目がヒットする。ここから「肺カルチノイド」をクリックすると、この病気が「C34.9 気管支及び肺の悪性新生物,気管支又は肺,部位不明」の一種であることが分かる。
この番号は、世界保健機関(WHO)が作成し、厚生労働省が採用した「ICD-10コード」。保険会社の保障範囲は、これを基に決められていることが多い。オリックス生命のがん保険「Believe(ビリーブ)」を例にとると、悪性新生物の保障対象は「C00~97」と「D00~09」をカバーしているので、肺カルチノイド(C34.9)にかかっても保障が受けられることになる。
「粘膜の上の『上皮』という層の内側にできるがんを『上皮内新生物(コード:D00~09)』といいますが、弊社のBelieveではこれも保障対象としています。保険会社の中には対象外としているところもありますので、契約する際には十分注意した方がいいですよ」
上皮内新生物は、大腸の粘膜や子宮頚部にできることが多く、他のがんでも初期の段階で上皮内にできることがある。放置すればがん化するおそれは高いが、治療すればほとんどの場合は快癒するので、保障対象の保険に加入にしておいた方が安心ということだ。
最初のがん診断への一時金や、入院したときの給付金がついている商品と、そうでない商品もある。万一のことを考えるのは誰しも億劫だが、親族でがんになった人がいるなら、いちど保険商品の種類を確認しておいてもよいのではないだろうか。