「不正の機会」が生じやすい構造的な問題がある
自治会長には、次のような理由で不正の機会が生じやすい。
・誰もやりたくない役をボランティアでやってくれている人に対して、周囲は遠慮し、うるさいことを言いにくい
・他の役員もボランティアであり、会計監査のプロではない。隣人を疑いたくはないし、いらぬ仕事は増やしたくない
・自治会長が預金通帳や銀行届出印を管理していれば、正に「任せきり」の状況が生じる
この事件でも、手口からみて、恐らく容疑者は預金通帳や届出印鑑を自由に使えたのだろう。また、横領を隠ぺいするために、2011年4月の決算の際には、1年前の定期預金証明書類をコピーして使うよう会計担当者に指示していたそうだ。
たとえ無報酬でも、自治会の役員は自治会に対して「善良なる管理者の注意義務」を負う。したがって、役員が横領して自治会に損害を与えた場合、本人はもちろん、他の役員も管理責任を問われて、自治会から損害賠償請求を受ける可能性もある。引き受ける以上は心してやらないといけない。
防止策としては、通帳(証書)と印鑑の保管者を分ける、預金残高のチェックを通帳等の原本で頻繁に行う、会計監査は税理士や会計士の住民に依頼するか外部に委託する、などがあるだろう。自治会でも、内部統制の基本の徹底が必要だ。
皆さんのところは大丈夫だろうか?(甘粕潔)