今回も読者から寄せられた働き方に対する相談にお答えします。
Q:アシシさんがノマドできているのは、経営コンサルタントという仕事だからですよね。それも新卒で外資系のコンサル会社に入れたからじゃないですか。他のノマド論者たちだって、みんな高学歴だし。結局、ラッキーな勝ち組だけの話じゃないんですか。そういう特権階級だからできる優雅な生き方を自画自賛し、社畜を批判する論法って、なんか上から目線で正直言って不愉快なんですよね。(ガチ底辺・29歳・ブラック企業勤務)
誰が会社やサラリーマンを否定できるのか
最近の「ノマド論者」の中には「会社はオワコン(終わった)」と言う人もいるようですが、僕はそう考えていませんよ。
社会に対して現実的に多くの価値を提供しているのは、企業組織ではないですか。世の中のことを熱く考え、同僚たちと力を合わせ、社会のために働いている人たちがいることを、僕はよく知っています。
そういう人たちを、誰が否定できるというのでしょう。まして僕のような既存社会からドロップアウトしたノマドたちは、彼らがつくり上げた豊かな社会をインフラとすることで、快適に仕事ができているのですから。このような背景を身を持って実感している人ならば、「会社はオワコン」だなんて、口が裂けても言えませんよ。
会社の中で生き残り、日本経済を支えるために闘っているサラリーマンたちを、僕はリスペクトすべきと考えています。自社やクライアントの発展に貢献し、ときにハードワークも辞さない「社畜」を批判するつもりは毛頭ありません。
僕のガチノマド的ライフスタイルは、「半年旅人」に焦点が当てられ、自由で楽な生き方だと揶揄されることもありますが、「半年仕事」の期間はそこらのブラック企業よりも過酷な労働環境の場合もあります。
僕みたいな助っ人でプロジェクトに参画する個人コンサルタントは、裏方の作業がほとんど。深夜まで長引いた会議の後、「村上君、明日の朝までに議事録作成して、関係者に展開しといて」と無茶振りされることも多々あります。
忙しいプロジェクトであれば、1カ月の残業時間が100時間を超えることもあります。コンサルタントというと小奇麗なパワーポイント資料を作成し、経営層を唸らせるプレゼンをしていると思うかもしれませんが、そういう役割を演じる人はほんの一部です。
学歴よりも「実力」「人脈」「覚悟」
半年間の自由を得るために、半年間は馬車馬のように働く――。それが、僕が提唱するガチノマドの生き方です。フリーランスとしてバリバリ稼げる「ノマド」になるためには、次の3つの要素が必要だと考えています。
(1)差別化されたスキル
業界の中で、他人を上回る能力を持つことが必要です。「この領域なら僕に任せてください」と自信を持って言えるウリがあることが望ましい。僕の場合、神経質と言えるほどマメな性格が、プロジェクト管理の緻密な作業にフィットしていると思います。ちなみに、このスキルは「半年旅人」の間も存分に発揮されています。
(2)仕事をくれる人とのつながり
人脈という表現はあまり好きではないのですが、仕事をくれる人、つまり顧客がついている状態でないと、フリーで食っていけないのは自明です。実力を正当に評価してくれる複数の顧客がいることが、独立の最低条件です。
(3)自由と孤独を引き受ける覚悟
自由な生き方は、半面孤独でもあります。上司に叱られることもなく、部下を育てる喜びもなく、ましてや社員旅行のような一体感を感じる団体行事なんてあるはずもない。何もかもひとりでやっていく覚悟がないと、ノマドはやっていけません。
いま「ノマド」としてメディアに取り上げられている人は、確かに高学歴で、大企業での勤務経験者が多いです。そんな人たちに「みんなもノマドになろうよ!」と呼びかけられたって、白けるのは当然です。
でも、重要なのは高い学歴や大企業での職歴ではなく、上記の3つの要素をいかに満たすかということです。もしも自分が強く望むのならば、経歴にとらわれることなく、これら3つの要素を満たす道を模索するのがよい選択だと思います。(村上アシシ)