前回のJKT48の記事にも書いたように、いまのジャカルタには異様な「高揚感」が満ち溢れています。渋滞するクルマのエンジン音、工事現場の騒音、ショッピングモールを歩く人たちの話し声――。どれも日本にもあるようで、何か勢いが違います。
その背景には、インドネシアの急速な経済成長があるのでしょう。国内の自動車販売台数は過去最高の100万台超えが予想され、前年比で10%以上も伸びています。そのうち9割を占めるのが日本車ですから、その恩恵は日本の自動車メーカーのみならず、日本の部品メーカーや現地採用の日本人の待遇改善にもつながっています。
自動車販売100万台、その9割が日本車の勢い
旅行会社に行くと、現地人向けにたくさんのパンフレットが用意されています。そのひとつが日本向け。日系旅行会社の方に、どんな人が日本に旅行に行くのかを尋ねてみました。
「日系企業の報酬旅行が多いですね。成績の良かった人や長年貢献している人へのご褒美です。日系企業の業績がよく、古参のインドネシア人スタッフの忠誠心を高めたいという希望も多いため、多くの日系企業がこのようなツアーを組んでいます」
海外で起業している友人からも聞きましたが、現地スタッフには「日本企業」で働くことにプライドを持っている人も多く、彼らを日本に招待することは、自社へのロイヤリティを高めるとともに、日本文化を知ってもらうことで仕事にポジティブな影響があるということでした。
「最近では、個人で行く人も増えています。円高なこともあり価格は非常に高く、日本円で20万円から30万円のツアーが多いのですが、日本人以上に金持ちの裕福層はもちろん、最近はサラリーマン層も増えています」
旅費を抑えるために航空券とホテルだけを予約する人もおり、「頑張れば海外旅行に行ける層」が増えていることが感じられます。
ジャカルタ在住8年の友人は「ここに来てから物価が倍に上がったけど、現地人従業員の給料も倍になった」と言っていました。日用品の購買力には影響はないけれども、自動車や航空券など内外価格差の小さいものは、インドネシア人の手に届きやすくなっているといえます。
希望に目を輝かせる人にモノを提供する仕事がある
給料の増加傾向は、今もなお勢いを増しています。今まで手が届かなかったものが、どんどん手の届く所に近づいてきている実感があります。毎年毎年上がる給料が、その距離をどんどん縮めているわけです。
今、ジャカルタの日系企業で働くということは、このように希望に目を輝かしている人たちや、そんな人たちのざわめきが渦巻く街に、モノやサービスを提供して彼らを喜ばせる仕事をするということです。
この高揚感が消費活動にも繋がっていることは、小売店で強く感じます。外国人やセレブ向けの超高級ショッピングモール「グランド・インドネシア」には、大金持ちのマダムがお手伝いさんを何人も引き連れて、ブランドショップをはしごしています。
高級ショッピングモール「プラザ・スナヤン」では、アウディの高級車が並んでおり、現地のインドネシア人で賑わう「プラザ・ブロックM」の1階にも、スズキやホンダ、トヨタの車が並んでいます。
すでに「道の面積よりもクルマの面積の方が大きい」と言われ、ビジネスアワーの8割が渋滞中といわれるジャカルタに、これ以上車を増やしてどうするのかと私などは考えてしまうのですが、「欲しいものは欲しいんだ!」という現地の人たちの情熱は止めようがありません。(森山たつを)