「この期間、あなたは何をなされていたのですか?」
特筆すべき職歴がなかったり、職務経歴書に空白があったりすると、採用面接官の印象は悪くなる。しかし、この方法が本当にベストなのだろうか。疑問を投げかける記事がウォール・ストリート・ジャーナルに掲載されている。
米事務機器大手のゼロックスでは、採用後にすぐ辞めてしまったり、問題を起こしたりしない求職者を見分けるためにコンピュータを使っているという。その際に重視されるのは、職歴よりも人間性だ。
精度バツグン、離職率が5分の1に減少
記事によるとゼロックスでも、以前は業務経験者かどうかを重視していたようだ。だが、コンピュータによる「適性検査」を半年間試したところ、従業員の離職率が5分の1に減ったことから、全ての採用をこの方法に移行することにした。
コンピュータのプログラムが判断するのは、求職者が「コールセンター要員に適しているかどうか」「採用してから窃盗などの問題を起こさないか」「労災を乱用しないか」「すぐにやめてしまわないか」といった要素だ。
結果として合格者は、業務経験に関係なく人間性がよい人が残ったという。この結果は、「新卒一括採用」に乗り切れなかった日本のニートにとって歓迎すべきことに思えるが、ネット上の反応は鈍い。
「職歴を重視しないとは、無視しないことじゃないから」
「まあ、そこに行く前に書類(学歴や年齢)で落ちるんだけどね」
「すみません、人間性にも自信がないですわ」
コンピュータが人間性を重視するのは意外に思えるが、コールセンターなど専門性があまり高くない仕事の適性を判断しようと思えば、職歴が占める比重が小さくなるのも当然だ。
一方で記事は、一般職の採用もコンピュータのアルゴリズムに頼る企業が増えているとも書いている。グーグルなどの大企業のほか、廃棄物処理を手掛けるような中小企業の事例も紹介されている。
担当者は「人による面接はなくならない」と言うが
コンピュータがどの程度あてになるかは分からないが、面接官による人材選びには、容姿など個人の好みが少なからず作用していたことは否めないだろう。コンピュータの適性検査とデータ分析によって、ある種の偏見が排除されるメリットはありそうだ。
ある日本メーカーの人事担当者に、このような方法を採用するつもりがあるかと聞いたところ、「可能性はあるが、やはり人間が面接する意味はなくならない」という答えが返ってきた。
「仕事というのは、人と人が力を合わせてやりますからね。この人は仕事を教えやすそうだとか、一緒に働きたいと感じる人材は、それだけで魅力的です。そういった部分は機械化するのは難しいのではないですか?」
しかし、社内の人間関係を重視する採用ばかりしていると、業務の適性の高さがないがしろにされかねない。コールセンターだけでなく、専門的な知識やスキルを要する仕事でもそうだろう。心機一転、「職歴無視」「コンピュータ採用」を掲げる会社は出てこないものだろうか。(山下真史)