小口現金やインターネットバンキングも要注意
官民一体となって「反社会的勢力との決別」を宣言し、昨年は全都道府県で暴力団排除条例が施行された。金融機関をはじめとして、各企業では取引先の「反社チェック(相手が反社会的勢力と関連があるかどうかを調べること)」を励行し、暴力団等の資金源を断とうと躍起になっている。
しかし、このような形で社員が横領した資金が「ダダ漏れ」になってしまっては、暴力団排除に向けた地道な努力が水の泡となってしまう。
そもそも、中小企業は、大企業に比べて内部統制などの管理にヒトとカネを投じる余力が少なく、横領のリスクにさらされやすい。中小企業のオーナーはその点を十分に認識する必要がある。
冒頭の事件は決して他人事ではないのだ。「うちは大丈夫か」という危機感をもって管理体制を見直す機会としたい。
どんなに頼りになる部下がいても、「カネ回り」を任せきりにしてはいけない。会社の規模が自分の目の届く範囲である限り、財布のひもはオーナーががっちりと握っておくべきだ。
取引先への集金は自分で行く。小口現金、預金通帳、小切手、届出印鑑、インターネットバンキングのIDやパスワードは社員にさわらせない。預金口座の動きは、毎日自分の目で細かくチェックする。それくらい徹底してもいいのではないか。
そうすることで、自分の会社を守ることができ、社会的責任も果たせるのだ。(甘粕潔)