泣きを見るのは団塊ジュニアからバブル世代あたり
選択肢としては2つ考えられる。まずは、少なくない数の経済学者が主張するように、年金の積立不足相当額の800兆円ほどを切り離して別枠で管理しつつ、新たに積立方式の新年金制度を立ち上げるというものだ。
これなら積立不足分は数十年~百年ほどの超長期間で返済すればいいし、いくら払っていくら貰えるかがすべての世代にクリアになる。イメージとしては国鉄清算事業団が近い(興味を持った人は拙著「世代間格差ってなんだ」または鈴木亘著「年金問題は解決できる! 積立方式以降による抜本改革」を参照のこと)。
もう一つの選択肢は、このまま積立金が枯渇するまで何もせず座して待つというものだ。それで逃げ切れる世代もいれば、給料の20%近くを天引きされ尽くしたあげく、リタイア直前になって泣きを見る世代も出現するはずだ。
ちなみに前出・鈴木氏の試算によれば、現状のままでは厚生年金の積立金は2030年頃に枯渇するから、座して待つといってもそんなに遠い未来の話ではない。泣きを見るのはちょうど団塊ジュニアからバブル世代あたりになるだろう。
これから日本がどちらの道に進むのかは、筆者にはわからない。ただ一つ確実なことは、強引にAIJ騒動を幕引きしつつ、年金自体の抜本改革は拒否し続けている厚労省は、間違いなく後者を選択しているということだ。(城繁幸)