中国のエリートたちに、日本の東大生はかなわない――。そんなショックな実情を、中国のトップ大学で教壇に立つ日本人教授が「日経ビジネス」(2012.9.24)のインタビューで明かしている。
日本の東京大学は、人口1億3000万人のうちの3000人。これに対して中国の清華大学は、中国13億人のトップクラス2500人が入る超難関だ。勉強量も圧倒的に多いので、「これでは日本がかなうわけがありません」という。
入学しても競争。地頭も「すさまじく優れている」
インタビューに答えているのは、清華大学と、もう一つの名門北京大学の両方で教壇に立つ唯一の日本人、紺野大介氏。日本のNPO法人、創業支援推進機構の理事長も務めている。
紺野氏によれば、中国にも学習塾があるが「そこでいくら学んでも太刀打ちができないほどずぬけた人材」が清華大学に入学してくるという。
たとえば、ゴビ砂漠で馬に乗って羊を追いかけている子どもたちに、高校2、3年生になって教科書を見せると、「脱脂綿がインクを吸うよう」に知識を吸収していく。子どものころから塾通いをするガリ勉タイプではない、センスを持った人材がいるようだ。
こういった「地頭がすさまじく優れている」学生には、中国国内のトップ大学だけでなく、米国のハーバード大学やコーネル大学などからも声がかかる。
さらに清華大学では入学後も科目ごとに成績を貼り出すので、「我こそナンバーワン」という高いプライドを持った学生たちは、猛烈に勉強をし続ける…。これが「日本がかなうわけがない」理由だ。
都内に勤務する30代の大手商社マンは、この記事を読んで危機感を抱いたという。
「中国や韓国のデモの様子を見て、正直『こいつらバカだな。日本はまだまだ安泰だ』と笑ってたんです。でも、もしかするとエリート層は全然違うのかなって。あの騒動って日本人を油断させるためのワナだったのか、と思ってしまいましたよ」
「中国の発展に日本が貢献」知識人の9割が理解
中国人は怠け者で横柄で自己中心的、というのがネット上での「定説」だが、紺野氏によれば、中国のトップエリートは、学生も教員も産業界のリーダーも「ひたむきで謙虚」だという。
知識階層の9割は、反日デモなどの騒動を苦々しく思い、日本を怒らせたくないと考え、「中国の経済発展にどれだけ日本が貢献しているのか」よく分かっているという。
日本の大学教育のあり方については、9月22日に茂木健一郎氏がツイッターで、
「日本の大学が、ペーパーテストの点数だけで入試を決めているというのは、つまり、経営を真剣に考えていないということ。どんな生徒のミックスをしたら最も刺激的な学びの場になるか、ろくに考えていない」
「東京大学は、ペーパーテストの点数が高いやつばかり入ってくるから、均質でつまらない大学になる」
とつぶやいたことから、「ペーパーテストの点数も大事」などとネットで議論が起こった。
学生の多様性を重んじる米大学の経営や創造的な風土を見習うべき、という趣旨の茂木氏の指摘は傾聴に値するだろう。その一方で、日本の学生も「猛勉強」と他国をあなどらない「謙虚さ」を身につけないと、お隣の中国に抜かれてしまうかもしれない。