臨床心理士・尾崎健一の視点
プライベートのことでも相談しやすいしくみを
自己破産の原因は、財テクやギャンブル以外に、親の借金が自分に降りかかってきたような場合もあります。そういうことに巻き込まれた不運な人の中には、破産処理を進めながら真面目に会社に勤務する人もいます。仕事がなければ処理が遅れるわけですから、会社は安易に退職勧奨などをすべきではないと思います。
今回は人事が聴き取りをしたようですが、本来なら直属の上司がA君の様子の変化を見逃さないようにすべきでした。社員がプライベートなことでも相談でき、秘密が守られるルートがあると理想です。社員がお金に困ることもありうるわけですから、会社はあらかじめ「自己破産では解雇にならない」ことを知らせつつ、万が一の場合には低利で緊急融資する手段などを準備しておいてはいかがでしょうか。古きよき時代の日本の会社では有形無形に見られたものですが、もしこうした体制やしくみがあれば、A君が自己破産する前に取り得た対処があったかもしれません。
(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。