社会保険労務士・野崎大輔の視点
社員が自己破産しても解雇は難しいだろう
自己破産とは私生活上の問題であり、会社が管理すべき範囲のことではありません。普通に勤務している限り、A君を解雇することは困難です。判例には、ある信託銀行が自己破産した行員を解雇したことを有効としたものがありますが、よく見ると特に信用が重視される業務であったことや、他の問題行為などを総合的に判断したもののようです。
自己破産によって警備員や宅建業者、証券外務員などは資格制限を受け、会社の取締役への委任も終了します。しかし数か月間で破産手続きを終えて復権すれば資格制限等もなくなるので、解雇は難しいでしょう。今回は製造業の経理部員ですので、会社としては適性を疑いたくなるでしょうが、現実的には金銭を取り扱わない部署へ異動させる対応が適切だと思います。なお、一般的には株やFXといった資産運用は副業としていないケースが多いようですが、社員のトラブルが目に余るようであれば、副業禁止規定の見直しも必要ではないでしょうか。