報奨金80億円! 内部告発は「おいしいビジネス」になるか

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   米国の国税庁にあたるIRSが、スイスの銀行による不正を内部告発した男性に、1億400万ドル(1ドル80円換算で83億2000万円)の報奨金を支払ったと報じられた。

   報奨金の支払いは2006年改正の税法による措置で、税法違反の摘発に有益な情報を提供した者に対して、IRSが追徴課税額等の最大3割を支払うというものである。

   米当局に情報提供したのは、UBSの元職員B氏(47歳)である。B氏は米国生まれ。スイスのビジネススクールで金融を学び、英国のバークレーズ銀行などを経て、2001年にUBSに入社。米国人顧客を担当していた。

IRSは「4000億円以上の追徴課税」に成功

日本にも同じ流れがくるだろうか
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   IRSは、B氏の内部告発をもとに、スイス最大手のUBS銀行が米国人顧客の脱税に加担していたことを摘発。UBSは訴追を回避するために加担の事実を認め、7億8000万ドル(624億円)を支払うとともに、4700口座のデータをIRSに引き渡した。

   それにより、数万人の米国人が恩赦を求めて海外の隠し口座を自主的に開示。IRSは計50億ドル(4000億円)以上の追徴課税に成功した。IRSはさらなる実態解明に乗り出し、少なくとも11行が米国内で捜査を受けており、多数の銀行関係者や米国人納税者が罪に問われている。

   秘密のベールを剥がされ顧客からの「信頼」を失ったスイスの銀行は、プライベート・バンキングの収益低迷に直面しているそうだ。

   B氏によれば、彼を含む約60人の担当者が米国人顧客を担当しており、スイスの口座の資金を美術品や宝石類に換えて米国に持ち込むなどの手口で脱税に加担していた。B氏自身も、歯磨き粉のチューブの中にダイヤモンドを隠して「密輸」するなどしていた。

   UBSは不正が摘発されないよう、行員に対して「暗号化されたノートPCを使用する」「米国入国の際は、ビジネスではなく必ず観光目的と申告する」などと徹底しており、組織的な関与が疑われている。

   B氏は、2005年にUBSのコンプライアンス部門に通報して是正を求めたが、何ら対応が取られなかったため、最終的に米当局に告発する道を選んだそうである。

   結局、B氏自身も、顧客であったカリフォルニア州の資産家による脱税に加担した罪で懲役3年6か月の判決を受け服役。8月1日出所し、現在は当局の監視下で暮らしている。

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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