自分たちの未来を自ら閉ざした中国人学生
ところで、中国経済は今、とても微妙な時期にある。単純な人件費の上昇に加え、雇用コストを大幅に引き上げる労働契約法の制定により、低コストでいくらでも労働力を確保できた時代は終わりつつある。実際、さらに人件費の安い東南アジア諸国がそういった役割を担うことになり、遠からず中国が「世界の工場」だった時代は終了するはずだ。
そのタイミングで、中国経済はより付加価値の高い産業にシフトせざるを得ない。逆に言えば、そうやって国民の所得を増やしていけるかどうかが、先進国にテイクオフできるかどうかの次のステップなのだ。
もちろん、そのアプローチとして「最低賃金を引き上げろ」とか「定年まで面倒み続けろ」と国が規制するのはバカの極みで、基本的には企業がそういう投資をしたがるように、規制緩和でビジネス環境を整備し、インフラを整え、優秀な人材をプールできるよう教育にも投資せねばならない。
そういう意味では、暇そうな若者たちが、気にいらない企業の店舗や工場に放火し略奪してまわっている光景は、世界の企業に衝撃を与えることだろう。しかも政府が「愛国無罪」とか言ってろくに取り締まる姿勢も見せず、補償責任も放棄している姿勢は、この国がグローバル企業の事業拠点としては致命的な問題を抱えていると宣言しているようなものだ。
筆者の感覚で言うと、もうこれから中国には「燃やされてもいいような拠点」しか置かない企業が増えるのではないか。
団塊世代は暴れるだけ暴れたものの、大半の学生は「裏で就活はちゃっかりこなして」(by 猪瀬東京都副知事)企業社会にエグジットし、豊かになっていった。自らがエグジットするはずのポジションを破壊してしまった中国人学生が、団塊世代と同じ道をたどれるとは筆者には思えない。(城繁幸)