社会保険労務士・野崎大輔の視点
会社から「残業代を返せ」と言われかねない不正請求
言うまでもないですが、これは明らかに不正な残業代の請求に当たります。なぜなら、A君の分の残業代をB君が会社に請求するということは、B君が実際に働いていない残業時間を申請していることになるからです。会社は不正に請求した残業代を返還するよう、B君に求めることもできるでしょう。ただ、原因となったのは、現状の業務量にそぐわない「上限制」であり、これを上司も黙認していたとなると、社員だけを罰するのは気の毒な気がします。ここは、二度とやらないよう注意した上で、別の方法を考えたほうがよいと思います。
年間を通して業務の繁閑がある場合、「1年単位の変型労働時間制」などにより、一定の期間を平均して上限を超えない範囲で労働時間を調整することが可能です。しかし、これは個人で勝手にできるものではなく、労使協定が必要になります。管理職は一律の上限を決めるのではなく、業務の繁閑を見極めて、このような制度を柔軟に使うべきではないでしょうか。