無類の営業嫌いが気づいた「初めての仕事のやりがい」

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「相談」と「笑顔」あってこそ

   「何回も注文がいただける関係になる」「取引先を紹介いただける関係になる」「仕事抜きでも付き合える関係になる」という3つの営業を目指すことにしました。トークも、いきなり価格と機能の話をするのではなく、試行錯誤の末、自分の仕事をお客さまに分かってもらえるよう心がけました。

   そして、かつて1度だけ取引のあった東京・文京区の医療機器商社を半年振りに訪ねて、こんな形で切り出してみました。

「入社して1年間、文京区を担当して50社以上のお客様と仕事をさせていただきました。商品・サービスだけでなく、情報通信業界の動向はそれなりに押さえている自負があります。お気軽にお尋ねいただけましたら光栄です」

   するとお客さまは「そんなに実績があるとは知らなかった」と驚き、「ひとつ相談したいことがあるんだ」と笑顔で打ち明けてきました。これは、私にとって「事件」でした。振り返れば「商品を注文するかしないか」の返事にばかりに固執していた私は、それまでお客さまの笑顔を見る余裕もなかったのです。

   「相談」という言葉をいただいたのも、実は初めてのことでした。「関西に支店を出すのだが、お宅でサポートできるか?」。もし商品紹介に終始していたら、お話をいただくことはなかったでしょう。営業をしていて、初めて「うれしい」「この仕事をやっていてよかった」と感じた瞬間でした。

   このやり方を他のお客さまへも試してみると、「笑顔の相談」が舞い込んでくるようになりました。名刺の整理をきっかけに浮き彫りになった、営業スタイルへの反省や「相手の役に立ちたい」という願い。それをうまく示すことができれば「お客さまとの関係」は劇的に変化するに違いありません。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
「高城幸司の社長ブログ」
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