ヨーカ堂「非正規雇用9割」で雇用は増え、長時間残業は減る

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   小学生にクッキー生地と型枠を渡して、好きな形のクッキーを一枚だけ作っていいよと言ったとしよう。三角形や四角形、星形の型枠など、より取り見取りだが、食いしん坊な男の子なら、恐らく最後には枠を放り出してこう言うだろう。

「ボク、形にはこだわらないから、このまま焼いてよ。だってそれが一番たくさん食べられるでしょ」

   枠にはめようとすればするほど、枠の中に収まる面積は少なくなる。この小学生でもわかるロジックが分からないのが厚生労働省だ。

いびつな型枠では効率的にクッキーを焼けない

   どんな事業でも、事業内容によって人件費に回せる原資は決まっていて、それを法律でどうこうすることはできない。たとえば、商品を仕入れて店舗で売るという事業なら「いくらで仕入れていくらで売るか」という部分は事業環境で決まっているから、その中で人件費に回せる額はクッキー生地のように決まっている。

   その生地に対し、ムチャクチャいびつな形をした出っ張りだらけの「終身雇用」という型枠を使えと企業に無理強いしているのが、厚労省というお役所だ。当然、生地に収まるように枠自体は小さくしないといけない。企業が将来の業績に不安を感じれば感じるほど(後になってはみ出さないように)枠は小さくしておくしかない。

   人手が足りない分は、枠の中の正社員をいっぱい残業させるか、枠の外の非正規雇用を安く使い捨てるかするしかない。日本の長時間労働も、正規と非正規の格差問題も、根っこは無理やり枠を当て込むことから発しているのだ。

   でも、企業は厚労省ほどバカではない。従業員の9割を非正規雇用に切り替えると決めたイトーヨーカ堂は、どうすれば生地を最大限活用できるかしっかり理解しているわけだ。トータルの雇用は2千人以上増えるし、マネージャーや専門職コースを作ることで、正規と非正規の格差も是正されることになる。

   小さな枠の中に収まった人たちに過度な残業を課すこともなく、枠の外の人たちだけを踏み台にすることもなく、公平で効率的にクッキーを焼けるわけだ。

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人事コンサルティング「Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。ブログ:Joe's Labo
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