Pinterest(ピンタレスト)というSNSをご存じだろうか。興味のある画像データを、まるでコルクボードにピンで留めるように投稿できるサービスだ。他の人が集めたデータを自分のボードに簡単に取り込むこともできる。
ネット上のコミュニケーションは、これまで文字によるものが多かったが、ピンタレストは画像だけで楽しめるものだ。非常に個人的で感覚的なサービスでもあるが、これを企業がビジネスに使おうとする動きが見られる。
商品とユーザーの写真を並べる「ハローキティ」
ピンタレストは2010年に米国で始まり、世界で約2000万ユーザーを集めるといわれる。日本での利用者は10万人程度だが、月間の平均利用時間が300分近くあり(コムスコア・ジャパン調べ)、「ハマる人はハマる」サービスになっている。
ピンタレスト内の自分のボードに、自分や他人が投稿した画像を溜め込み、ファッション雑誌をパラパラめくるように楽しめる。ユーザー同士で投稿をフォローしあったり、コメントや評価をつけることもできる。
この説明だけでは「いったい、何が面白いんだ」と思うだろうが、SNSというものは使ってみなければ楽しさが分からないものだ。実際に自分で画像を投稿し、他人をフォローしてみないことには、サービスが自分に合うかどうかも実感できない。
ただ、ユーザーがどんどん増えて、滞在時間が長くなっているのは事実であり、そうなると企業が放っておかない。現在、日本企業で最もフォロワー数が多いのは、サンリオが運営する「Hello Kitty」で、現在6500フォロワーを超えている。
もちろん、投稿されているのがキティちゃんの画像だが、商品の画像のほか、キティグッズを身につけているユーザーの写真も取り込んでいる。ユニークなコーディネートは真似したくなるし、自分の知らないグッズを見ると欲しくなってしまう。
画像は元のサイトへのリンクになっているので、キティの写真を楽しんだ後は、商品の写真からECサイトで買い物を楽しむこともできる。アクセスの流入増に一役買っていると考えられる。ECサイト側にもピンタレストへの投稿ボタン「Pin it」が付いている。
「女性ユーザーが8割」を生かすことがポイント
ピンタレストには「女性ユーザーが多い」という特徴がある。グーグルの「Ad Plannner」で確認すると、2012年6月時点の男女比率は21:79。ユーザーの8割は女性だ。
これを踏まえてか、資生堂の化粧品ブランド「マジョリカ マジョルカ」が、ピンタレストの公式アカウントを運用している。商品写真やモデルの写真を、アイテムごとに掲載しており、画像をクリックするとECサイトやアマゾンへリンクしている。
米国の人気ファッションブランドGuessは、新作のカラーデニムをPRする画像投稿コンテスト「Color Me Inspired」を実施していた。Guessのアカウントをフォローしたユーザーが、自分のアカウントで「GUESS My Color Inspiration」というボードを作成し、そこに新作カラーデニムと同色の「春を感じさせる」画像を投稿する。
ユーザーのボードは、4名の著名なファッションブロガーによって審査され、優秀なユーザー4名にはデニムがプレゼントされる、という仕掛けだ。キャンペーンに参加したユーザーのボードはカラーデニムの色に染まり、ボードが他のユーザーにフォローされてカラーデニムの写真が「拡散」していった。
ユニクロが「ドライメッシュカットソー」をPRするキャンペーンでは、ピンタレストをパラパラマンガに見立て、ボードを縦スクロールすると、ドライメッシュカットソーがコマ送りになって動き出すしかけになっていた。現在はユニクロのサイトからのクリッピングを表示している。
ヴィジュアルに訴える商品を扱っている会社や店舗で、利用を検討してみてはどうだろう。ただし運用担当者がユーザーとして、このサービスを感覚的に楽しめることが最も大事だと思われるのだが…。(岡 徳之)