いつもは質疑応答が交わされているQ&AサイトのOKWaveに、こんな「意見」が掲載されている。質問者のkemistさんは「韓国企業に就職されている日本の方々へ」と題して、できる限り早い段階で「韓国企業を辞めていただきたい」と呼びかけている。
韓国企業に渡った日本人の「知識層」は日本の資産であり、わざわざ日本を敵視している国に自分の知識を切り売りするのはやめて欲しいと訴える。特にエンジニアが日本メーカーから流出し、韓国で働くことを懸念している。
「個人の部分最適より、日本の全体最適を考えて」
その理由は、「日本あっての我々日本人」であるから。個人の「部分最適」よりも日本の「全体最適」を考えて、とにかく韓国を利することは止めよう、という主張のようだ。
これには、回答者のpoomenさんが「馬○丸出し!能力がある人は軽々と国境の壁を越えてゆく」と激しい口調で批判している。
「日本のクソ企業が社員の能力をきちんと評価しないから、評価してくれるアメリカ、中国そして韓国へと流れてゆくんですよ。まずはきちんと能力を評価しない日本企業に働きかけたからどうですか?」
対立した意見にも見えるが、質問者さんも日本人技術者の流出の背景に、待遇などへの不満があると理解している。問題意識はさほど違わないのかもしれない。
海外メーカーが力をつけて日本を追い越した理由のひとつに、日本人技術者の流出があるという説は有力だ。ブログ「レジャーサービス研究所(東京&上海)」には、日本とアジアで作業管理を35年間指導してきたT氏の話が紹介されている。
T氏によれば、韓国系、台湾系、中国系、日系メーカーのライバル企業には、いずれにも日本人技術者がいて、かつて「粗悪品」と言われていた製品を日本人も納得するレベルに指導してきたという。
したがって、アジアの家電市場で日本が負けたように見えているが、実際には「日本人が日本人と戦っている構図」という見方もできるのだとか。その契機となったのは、90年代から始まった日系メーカーのリストラだった。
負けたのは「モノづくり」ではなく「本社」という説
結局、負けたのは「日本のモノづくり」ではなく、「モノづくりの現場」を切り捨てた「日本の本社」であり、「マーケティングやセールス、企画にデザイン」の部門というわけだ。
欧米式のリストラであれば、短期労働者中心の工場を切ればよいが、日本のような熟練技術者を抱える現場を切ってはいけなかった、というのがT氏の見立てである。
別の回答者のCorei7-Exさんも「日本企業はたとえ誰かが偉大な発明をしてもその人をきちんと評価」しないので、優秀な技術者が海外に流出しても「当然のこと」という。
不幸にもリストラに遭ってしまった技術者たちは、怒りに燃えながら、新興アジア各国の新しい職場へ臨んだのだろう。そして、赴任先の技術力を日本に供給できる水準まで上げていこうと誓ったに違いない。
日本のメーカーが本国で大赤字を出して喘いでいても、日本人技術者はアジア各国で感謝されながら、しっかり稼いでいるという。そんな彼らに、今さら「他国を利するな。いますぐ日本に帰ってこい!」と言えるだろうか。