臨床心理士・尾崎健一の視点
実績を評価して「時効」としてもいいのでは
私は、懲戒解雇はもちろんのこと、退職勧奨もすべきではないと思います。法律は「募集・採用における年齢制限の禁止」を義務付けていますが、その趣旨は求職者個々人の能力や適性を判断し、働く機会を均等に与えることです。Aさんのような能力や経験のある人に働いてもらえないのは、会社としても望ましくないはずです。
仮に会長が秘書に対して「会社の看板」であることを求め、容姿や若さを求めていたとしても、年齢だけで機械的に切るのはどうでしょうか。実際、Aさんは1年間業務を問題なく執り行っており、会社の要求・期待に応えてきた実績が存在するわけですから、入社時の「年齢詐称」は時効として不問とされてもいいと思います。会長に対しても、これまでの「年齢制限」を緩和するよう人事から提言できないものでしょうか。コンプライアンス面でのリスクが高いことも見直しの根拠になります。
(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。