お金は優しさを作る 人はお金がないと優しくなれない

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「いいお客さまでも、お金がなくなると人が変わる」

   督促は今、ほとんどの会社がコールセンターで一括して行っていますが、以前は支店で他の営業や審査といった業務の中の一つとして行われていました。

   私は延滞したお客さまとしか接したことはありませんが、支店を経験している先輩は、一人のお客さまがカードを申し込みに来て、審査をして融資をして延滞をする、その過程をずっと見続けていたのです。

「どんなにいいお客さまでも、お金がなくなると人が変わるの」
「そ……、そうなんですか……」

   確かに「借金がある」ということは、とにかくストレスフルな状態です。そんな状態でしつこく督促の電話がかかってきたら、電話口のオペレーターを怒鳴りつけたくなるのも仕方ないのかもしれません。

「支店にいた時に、お金を借りに来る時に必ず女子社員にケーキを持ってきてくれる優しいお兄さんがいたんだけど、途中で仕事がうまくいかなくなったみたいで、最後は私たちを怒鳴りつけるようになっちゃったの。お金は人を変えちゃうのよね」

   先輩は遠い目をして言いました。世の中、お金より大事なものもあるのかもしれませんが、やはり人間優しくなるためにはお金が必要なんだなぁと、この業界にいると痛切に感じてしまうのです。

   会社に決められた応答率や、お客さまの心理状態のせいで、オペレーターが悪くなくても怒鳴られることが多くあるこの仕事ですが、督促を始めて随分と強くしてもらった気がします。人間修業には事欠かないお仕事だなぁ、と思いつつ、私は今日もコールセンターで怒鳴られながら督促業務を行っています。(N本=えぬもと)

債権回収OL・N本(えぬもと)
某金融機関で債権回収部門に所属する20代OL。コールセンターで支払延滞顧客への督促を担当している。入社半年で3億円の回収を達成して頭角を現し、10万件の顧客を担当する精鋭チームに最年少で配属された実績を持つ。他人に強く言えない気弱な性格を逆手にとり、独自の「交渉メソッド」を開発。300人のオペレーターを指導しながら、年間2000億円の債権回収に奮闘している。好きなものは、ビールとスイカ。ブログ「督促(トクソク)OLの回収4コマブログ」。(本コラムは当事者のプライバシー保護のため、一部事実と変えている点があります。)
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