「仕事運」に振り回されない人は、どん底まで落ちることはない

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   営業は他の仕事と比べて、景気や為替、クライアントの都合などの環境要因に影響を受ける部分が大きいという特徴があると言われています。そのため、営業成績が上がるも下がるも「運次第」と捉える人もいます。

   確かにそういう側面も否めませんが、だからと言って運任せで仕事をしても成績は上がりません。運を引き寄せるのも努力次第。そしてラッキーなときにもおごらず、ツイていないときにも腐らない仕事ぶりが大事です。

ラッキーを実力と勘違いして天国から地獄へ

「モテ期」なんて長くは続かないもの
「モテ期」なんて長くは続かないもの

   以前ある広告代理店で、30代の営業マンAさんのエピソードを聞きました。彼が担当していたクライアントが、5年前に業界再編で同業他社と合併をしたそうです。

   これによりクライアントの企業規模が一気に3倍に拡大し、社名変更もあって広告プロモーションの予算がアップ。Aさんは前年比で2.5倍の発注を獲得することができました。

   社内での評価も急上昇し、ボーナスは同期でトップ。翌年度には管理職に抜擢されるという幸運が続きました。ここでAさんがよくなかったのは、いい気になって、

「同期で一番仕事ができるのは自分だ」
「自分についてくれば出世できるから」

と途方もない大風呂敷を広げてしまったことです。

   しかし、そんな「モテ期」も長くは続かないもの。管理職になった翌年度、Aさんの部署の売り上げは半分になってしまいました。合併特需が終わって発注が元に戻ったうえに、恩恵をもたらしたクライアント以外の手当てが手薄になり、離反を招いてしまったのです。

   管理職経験の浅かったAさんは、部下に「売れるまで帰ってくるな」「無理なら俺が売ってくるから担当から外れてくれ」などと無茶な指示ばかりするので、部内のモチベーションは下がりまくり。体調を崩した部下が人事部にクレームを入れてきたこともあったそうです。

   これまで自分の運のよさを誇り、周囲をバカにしてきたAさんに、周囲が手を差し伸べることはありません。経営陣も「抜擢が早すぎたかな」と管理職からの降格を命じました。Aさんには色々と学習してもらい、この経験を決して無駄にして欲しくないと思います。

クライアント志向の地道な仕事が実を結ぶ

   一方で不景気にあっても、派手さはないものの、普段の地道な仕事ぶりが認められるケースもあります。Aさんと同じ会社の後輩のBさんは、クライアントに無理のない提案を旨としてやってきました。社内では、

「そんなクライアントは捨ててさ、もっと大きい仕事を狙ってよ」
「大きな売り上げを強引に提案する馬力がないな」

と冷ややかに見られていたそうです。ところがある日、長年丁寧にフォローしてきたクライアントから「ぜひともあなたにお願いしたい仕事があるんだけど」とコンペ参加の要請がありました。

   ライバル2社は、自社とは比べ物にならない大企業。どうせ当て馬だろう、という社内の噂も気にせず、Bさんはいつもと同じクライアント志向の提案書を持ってプレゼンに望みました。ライバルも手を込んだ企画を出してきたようですが、結果はBさんが受注に成功。

「これまでの仕事ぶりも踏まえて判断しました。期待していますよ」

と感動的な言葉をいただくことになりました。Bさんはその仕事を成功させた後も、Aさんのように浮き足立つことなく地道な仕事を続け、クライアントで大きな仕事が発生したときは確実に食い込む営業を積み重ねているそうです。

   自分が得た幸運を、どのように活かすか。運を実力と勘違いした人は、天国と地獄を行ったり来たりすることになることでしょう。しかし目の前の結果で一喜一憂せず運に振り回されない人は、どん底まで落ちることはありません。「運気アップ」ばかり追求して、楽をしようというのも考えものです。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
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