「新卒一括採用」の弊害を耳にすることがある。企業にとっては採用や教育研修を効率的に進められるメリットがあるが、うまくレールに乗れなかった卒業生など求職者にとっては、大きな壁となって立ちはだかることがあるというのだ。
大学卒業と同時にどこかの会社に就職できなければ、翌年以降に「新卒」のカードが使えなくなり、求人のスタートラインにすら乗れなくなる。「既卒者3年以内は新卒扱い」とする企業もここ数年で増えたが、新卒とまったく同じ条件ではない会社もあるし、既卒4年以降では対象外となってしまう。
職歴がなくても受講できる。参加費は無料
問題は、企業の採用計画がその年の景気見通しに大きく左右されることだ。最難関大学の卒業生ならまだしも、フツーの卒業生はその影響をまともに受けてしまう。有名大学の卒業生であっても、大手企業に入社できるラインが大幅に引き上げられる。当事者たちにとっては理不尽と感じられるだろう。
ここで一度つまずいたことで、働ける能力はあるのにモチベーションを大きく下げてしまう若者は少なくない。ふと「このままではマズイ」と思っても、具体的に何から手を着けていけばいいのか分からない。実家住まいなど恵まれた環境にあれば、はじめの一歩をなかなか踏み出せない人がいてもおかしくない。
そんな人たちに向けて、リクルートが「ホンキの就職」という若者のための就職応援プログラムを実施している。CSR(企業の社会的責任)活動の一環で、参加費は無料だ。
リクルートといえば、「リクナビ」などのサービスで新卒学生向けの情報提供を行っているほか、「リクナビNEXT」や人材紹介サービスなど転職情報のサービスを手掛けている。こうしたサービスでの知見を活かし、若者の就職支援を行っていこうというものだ。
プログラムを開始した2011年4月から2012年3月までの1年間で、受講者は約1300人。そのうち3人に2人が内定を得ている。なかなかの好実績だ。内定先には、中堅優良企業も含まれるという。
「同じ悩みを持つ人が集まる」ことに大きなメリット
「ホンキの就職」とは、どんなプログラムなのか。大まかに言うと、少人数制のグループワークによって、現状の就職市場を把握し、一人ひとりが自分の強みを活かせる仕事を選び出す。そして、自信をもって応募行動に踏み出せるよう、面接の実戦練習までサポートしてくれるものだ。
「自己分析」や「自己PR」「志望動機」などの準備をどうすればよいのか、自分の考えた案をチェックし、どこを改善すればよいのか指摘してくれる場があれば心強いだろう。うまく内定を獲得できた人によると、「一緒に就職活動を進める仲間が作れること」が参加の大きなメリットになるという。
「同じ悩みを持つ人たちが集まることで、『悩んでいるのは自分だけでない』ということが分かりますし、グループワークを中心としたプログラムを通して、お互いに刺激を与え合い、自信を持って応募に踏み出せるようになります」(リクルートCSR推進室・黒石健太郎さん)
プログラムには、書類・面接対策を学びたい人向けの1日コース(1Day Seminar)と、就職の基本から始めたい人向けの4日コース(4Days Group Work)がある。開催に当たっては銀座のオフィスにセミナールームを設け、求人検索や書類作成などの活動準備ができるワークスペースも無償開放している。
現在、15歳から34歳の120万人以上が、「失業者」であると言われる。2011年度の「ホンキの就職」参加者の92%が既卒者で、平均年齢は24.8歳だった。同じ境遇に置かれているのは自分だけではないことを知るためにも、一歩踏み出してみてはどうだろうか。