臨床心理士・尾崎健一の視点
離職票の「離職理由」について納得させることが大事
退職後に労使が揉めそうなポイントを考えると、離職票の「離職理由」について双方が納得しているかどうかが重要になると思われます。感情的なしこりが残っていると、会社が「労働者の一身上の都合」で離職票を作成しているのに、退職者が窓口で「実は違う」と申し出るおそれがあるからです。するとハローワークは事実確認のため、会社にタイムカードや賃金台帳、経過書などの提出を求めることがあります。
例えば、残業代の適切な支払いを怠っていた場合、退職者が密かに集めた証拠を基に「実はこんなに残業していたから特定受給資格者になりますよね」と申し出るかもしれません。また、特定受給資格者の対象者には、職場いじめやセクハラ、パワハラがあったのに会社が適切な措置を講じなかったため退職せざるを得なかった人も含まれています。ハラスメントで「自己都合退職」に追い込んだつもりでいたら、ハローワークから照会を受けるおそれもあります。ハローワークがサービス残業やハラスメントを直接罰することはできませんが、失業手当の争いをきっかけに労基署などに訴えられるリスクが高まることは確実です。
(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。