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臨床心理士・尾崎健一の視点
離職票の「離職理由」について納得させることが大事

   退職後に労使が揉めそうなポイントを考えると、離職票の「離職理由」について双方が納得しているかどうかが重要になると思われます。感情的なしこりが残っていると、会社が「労働者の一身上の都合」で離職票を作成しているのに、退職者が窓口で「実は違う」と申し出るおそれがあるからです。するとハローワークは事実確認のため、会社にタイムカードや賃金台帳、経過書などの提出を求めることがあります。

   例えば、残業代の適切な支払いを怠っていた場合、退職者が密かに集めた証拠を基に「実はこんなに残業していたから特定受給資格者になりますよね」と申し出るかもしれません。また、特定受給資格者の対象者には、職場いじめやセクハラ、パワハラがあったのに会社が適切な措置を講じなかったため退職せざるを得なかった人も含まれています。ハラスメントで「自己都合退職」に追い込んだつもりでいたら、ハローワークから照会を受けるおそれもあります。ハローワークがサービス残業やハラスメントを直接罰することはできませんが、失業手当の争いをきっかけに労基署などに訴えられるリスクが高まることは確実です。


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(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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