社会保険労務士・野崎大輔の視点
過度な残業で「職場における事情による離職」となる
正確には「会社都合」ではありませんが、A君の主張は認められるでしょう。失業保険の受給手続きの際に「特定受給資格者」と認められると、会社都合と同じように支給条件が優遇されます。おもに倒産や解雇などによりやむなく離職した人が該当しますが、「解雇等により離職した者」の中には「離職の直前3か月間に連続して労働基準法に基づき定める基準に規定する時間(各月45時間)を超える時間外労働が行われたため(略)離職した者」という項目もあるのです。
これに対応する離職票の離職理由は「解雇」ではなく、「労働者の判断によるもの」の「職場における事情による離職」となります。ハローワークがA君の退職を「労働条件に係る重大な問題(賃金低下、賃金遅配、過度な時間外労働、採用条件との相違等)があったと労働者が判断したため」と認めれば、会社に照会した上で「特定受給資格者」となります。月45時間を超える残業が3か月以上続くと「過度な時間外労働」となるからです。これを認めることで会社の負担が増えるわけではありませんが、無用なトラブル回避のため、離職票のチェックは慎重にすべきです。