残業45時間超が3か月続いたから「会社都合で辞めます」って!?

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   労働環境がキツすぎて、早く辞めないと身体がもたない。でも、自分から辞めると言い出したら「自己都合」になるので、失業保険の受給に時間がかかってしまう。つなぎで使える蓄えもないし、どうしたらいいのか…。

   そんな悩みを持つ社員が、どこからか「抜け道」を探してきたらしい。ある会社では、20代後半の社員が「自分が退職せざるを得ないのは会社のせい」なので、「会社都合」で辞めさせてほしいと要求してきたという。

「辞めるのは会社のせい。フツーに働きたいんだ!」

――広告代理店の人事です。営業部長から「部下がワケの分からないことを言っている」と連絡がありました。28歳の営業マンA君が、会社を辞めたいというのです。

   辞めること自体は仕方がないのですが、A君の主張は「会社都合で辞めたい」というもの。そうしないと、退職した翌月から失業手当がもらえないと言うのです。

   しかし会社は、A君に会社を辞めるよう勧めたことはないし、そうすべき事情もありません。営業部長が「どう考えても自己都合だろ」というと、こう反論したそうです。

「ここ半年くらい、月50時間以上の残業が、ずーっと続いてるんですよ。こんなに長時間まともに働いてたら、誰だって身体を壊しますって。私はフツーに働きたいんです。ここにいられないのは、長時間労働を強要する会社のせいなんですよ!」

   何となく分かるような、屁理屈のような気もしますが、「直近3か月で45時間を超える残業が続いていることは証拠に残している」「ハローワークに問い合わせたら大丈夫と言われた」とまで抗弁します。

   退職後もトラブルが続くのは厄介なので、多少の便宜を図ってもいいと思います。ただ、辞めるのは明らかにA君の都合ですし、理不尽に屈すれば、つけこまれて別のクレームが来るような気がします。

   A君の離職票の離職理由には「労働者の個人的な事情(一身上の都合)」にチェックして突き返そうと思いますが、何かリスクはあるものでしょうか――

尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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