「ゴルフよりドラクエで接待をするべき」という主張がビジネスメディア誠に掲載されている。ライターのH氏がオンラインゲームの「ドラゴンクエストX」をプレイしていて思うのは、プレイヤーに「社会人が結構多いのではないか」ということ。
ゲーム内の「市場へのモノ(アイテム)の出品数」の推移を見ると、午後9時あたりから大きく増える傾向にある。ここから、夏休みで昼間は自由な時間がある学生よりも、仕事を終えてから夜間に自宅でプレイする社会人の割合が高いのではと推測している。
一緒に冒険を楽しんだあと、チャットで商談
ドラクエ第1作が発売されたのは1986年。そのころ中高生だった人は40歳前後になっている。プレイヤーの中には会社で決裁権を持つ人もいる可能性もあるわけで、「週末、ゴルフのコースを回りませんか?」と同じノリで、
「週末、転職クエでゴーレムを倒しに行きませんか?」
という誘いが成立する――。H氏はそう考えている。オンラインゲームでともに遊び、ひと通り冒険を終えてくつろぎながら、チャットで商談をする。これは、コースを回った後のランチで商談をする「ゴルフ接待」と同じではないか。
H氏は「『特技はイオナズン(「ドラクエ」シリーズに登場する破壊力の大きな呪文)です』という新人が、接待要員として総務部に配属される日も近いだろう」と言い切っている。
確かに「若者のゴルフ離れ」が指摘されて久しい。打ちっぱなしの練習場でも、熱心に打っているのは中高年の男性ばかり。付き添いらしき若い女性も見かけるが、若い男性の姿はほとんど見かけない。
朝早く起きてクルマを出し、上役や取引先を迎えに行って安くない料金を払い、「ナイスショット!」と叫んだりしながら炎天下を歩きまわり、一緒にシャワーを浴びて食事をして、眠気を我慢しながら自宅まで送る…。そもそも「クルマを出す」ところからして難しい。
とはいえ、ゲームがゴルフの代わりになるのか。中古ゲームやDVDなどを扱う「エンターキング」の運営会社、サンセットコーポレイション広報の小林さんに尋ねてみたところ、こんな答えが返ってきた。
「うちの社員は、ゲーム好きということでは他社に引けを取らないのですが、『ドラクエで接待』に賛同する社員は、ほとんどいませんでしたねえ…」
「リアルで対面」じゃないと交渉は不利になる?
「ドラクエ接待」が成立しない理由として、バイヤーのAさんはゲームファンの気持ちを代弁する。
「オンラインゲームの醍醐味は、リアルでつながっていない『顔の見えない人』と、その世界だけで楽しむことが主なんですよ。仲のいい友人ならまだしも、仕事相手とはゲームでつながりたくないというのが正直な気持ちです」
営業企画のBさんは、ゴルフが接待に向いているのは、リアルで対面しているからであって、遠隔地で楽しむオンラインゲームではうまくいかないと指摘する。
「プレイ中は同じ世界を共有しているような感じがするけど、いざ世間話や商談をチャットでやると冷めてしまいそう。それに対面してると頼みを断りにくくなりますが、チャットなら断りやすいので交渉には向かないでしょうね」
その他、「同じ世代でも偉い人はオンラインゲームにハマらなさそう」「『ファイナルファンタジー』でもそういう話が出ていないのだから難しいのでは」という意見もあった。
ただ、同じゲームをすることの効果を認める声はあった。「ゲームの話をしたり一緒にプレイしたりすることで、短期間に信頼関係を強めることはできそう」という見方だ。
「ものすごく『ドラクエ』にハマっていて、レアアイテムをそういう手段(接待)で貰うことに抵抗がない人なら、すごく喜ばれると思います」(人事部Cさん)
ゲームのユーザー層が50代にまで拡大し、SNS機能も充実してコミュニケーションを密接に取れるようになれば、「ドラクエで接待もアリ」になるかもしれない。