本屋さんに行くと、営業の本は山のように置いてありますが、回収の本はほとんど見つかりません。あっても多くが法的な手続きの本だったりします。
私は督促のコールセンターの仕事を始めたばかりの頃、必死に回収のスキルや回収トークを教えてくれる本を探したのですが、全然なくてとても苦労したのを覚えています。確かに回収はニッチなお仕事なのかもしれません。でも仕事や生活をする上で「回収力」があったら強みになる、と私は思うのです。
締め切りが守られないコストはバカにできない
「回収力」とは、他人と約束したものをきちんと実行してもらい、手元に確保するスキルのことです。
例えば、私は学生時代に小説誌の編集部で雑務のアルバイトをしていたのですが、デキる編集者さんは「作者さんの原稿を期限内に確実に回収してくる」という特徴がありました。
小説の原稿はメールでのやり取りなので、コスト的にはあまり差が開きませんが、イラストや漫画の原稿だと回収方法によって費用に差が出てきます。
イラストレーターさんが締め切りを守ってくれれば、イラストを編集部に届けるためにかかるコストは数百円の宅配便の料金で済みます。でも締め切りを過ぎてしまうと新幹線便や航空便を使うことになるので、その分送料が上がり、私たちアルバイトが駅や空港まで原稿を取りに行くので人件費も発生します。
さらに遅れると、編集者が直接新幹線に乗って原稿を回収しに行きます。それでも原稿ができないときは、結局泊まりがけになってしまうことも…。すると一つの原稿の回収に、交通費+人件費+宿泊費すら発生します。
相手に締め切りを守らせて期限内に原稿を回収できるかどうかで、数百円から数万円のコストの差が発生してしまうのです。
カードローンやキャッシングの「利息」も、相手からお金を回収できない可能性があるから付いているという一面があります。10人に1万円を貸して、9人しか返してくれなかったら1万円の損をしてしまう。
だから、返してもらう時に10%の利息を上乗せして1万1千円を返してもらえるようにする。すると、1人が返してくれなくても10万円が回収できるので損はしません。利息とは回収できないリスクを補うために付いているのです。
幹事さん、「キャンセル料」の回収も必要では?
でもちゃんと返している人が、返さない人の分のリスクを負担するって、ちょっと悔しいですよね。
よく懇親会などで、お店のコースは4,000円なのに、ドタキャンする人を鑑みて参加者から5,000円を徴収している場合がありますが、ちゃんと参加している人がドタキャンする人の分を払うってどうなんだろう…と思うことがあります。
もちろん「当日キャンセルはお支払いいただきます」とあらかじめ断っているのですが、ドタキャンした飲み会費を自ら進んで支払う人は少なく、わざわざ電話をかけてまで、
「この前の飲み会、当日キャンセルだったからお金払って欲しいんだけど…」
と催促するのは心苦しいというのは分かります。
けれど、そうやってドタキャンする人たちは、どんどん信用を失っていってしまうんです。誰かがそこでちゃんと代金を請求して「ドタキャンは困るんだ」と相手に伝えてあげないと、ドタキャンを繰り返して結局誰からも信頼を得られなくなってしまいます。
約束を守って参加している人たちに損をさせず、自分の信用を落とさないためにも、なるべくドタキャンはしないでほしいですが、もしドタキャンした人がいたら幹事さんは勇気を出してキャンセル料を回収することも、時には必要なことだと思うのです。
私もまだまだ研究&修行中ですが、「回収力」を高めると色々と特になる場面も多くあります。ビジネスや私生活に新しく「回収力」を導入してみてはいかがでしょうか。(N本=えぬもと)