デジタル化が進み、自筆の文字を目にすることが少なくなったが、宅配便の送票や電話のメモなど、どうしても手書きをしなければならない場面もある。そんなとき、意外な「悪筆」に出合って驚くこともあるのではないか。
20~30代のビジネスパーソンに「文字が下手な人の特徴」を尋ねたところ、男女で差があらわれた。男性の1位は「他の人が解読できなくても本人は読める」だったが、女性の1位は「『シ』と『ツ』、『ソ』と『ン』の区別がつかない」となった。
営業事務の26歳女性「文意を読み解いて判断」
なぜこのような違いが生じたのか。これは自分や同性の悪筆の特徴を反映しているのかもしれない。男性の悪筆は、力任せに書き散らすイメージがある。字は乱暴で、とても他人が読めるものではない。
一方、女性の悪筆は一見すると丁寧に見えるものの、丸文字のように形を崩した書き方が多いのではないだろうか。クセ字がひどく、「シ」と「ツ」、「ソ」と「ン」の区別がつかないと、具体的にどういうことが起こるのか。26歳の小売店員は自分の経験として、
「ウエニシ(上西)さん宛の郵便が、どうみても『ウエンツ』だった」
と振り返っている。「ニ」も「ン」になっている。「ソニン」と書かせたら、どうなってしまうのだろう。
22歳の技術職の女性も、「パーツがパーシになっている」郵便物を見ては、ひそかに楽しんでいる。読むコツがつかめてしまえば、さほど不便を感じずに「またこの人、こんな字を書いてる」と微笑ましく処理することができるのだろう。
外回りのベテラン営業マンたちから、手書きの営業日報をファクスで受け取っている営業事務の26歳女性は、読めない文字は「文意を読み解いて判断するようにしています」という。会社に欠かせない一種の特殊技能と言えよう。
男性で1位の「本人だけが読める」悪筆について、29歳男性は「(自分には)まったく読めない字だったのに、本人はすらすら読んでいることが多い」と不思議に思っている。40代後半のベテラン事務職員も、自分の悪筆は自覚していたが、
「就職してすぐ、字が汚いからと何度も書類を書きなおされ、ホントに泣きそうになった」
と振り返っている。当時はまだ経理でもパソコンを使わずに、手書きで帳票を作っていたのだろうか。数字の「7」と「1」がうまく書き分けられない人もいる。字が上手でない人にとって、ずいぶん仕事がしやすい時代になっているといえるだろう。