お盆休みを使ってマイカーで帰省している人も多いだろう。タイヤメーカーのブリヂストンは、若者がクルマを運転する機会が増える夏休みに合わせ、iPhoneアプリ「Drive Link」をリリースしている。
ドライブや旅行中に撮影した写真を複数枚投稿すると、簡単にムービー作品に仕上げてくれる。写真を撮った場所の位置情報や、写真につけたコメントも残すことができるので、自分がいつどこで、誰とどんなことをして楽しんだのか、思い出をまとめるのに最適だ。
家族や恋人、友人との楽しいドライブ体験を演出
ムービー(テンプレートによってはスライドショー風)は、すでに準備されたBGMをつけてフェイスブックで共有できる。
写真にコメントやタグをつけて共有することは、これまでもあっただろう。これをDrive Linkでムービーに加工すれば、臨場感はより高まる。見る人の目を引きつけて、多くの「いいね!」が集められそうだ。
なぜタイヤメーカーがアプリなのか、とも思うが、家族や恋人、友人との楽しいドライブ体験とセットにして、自社ブランドを記憶に留めてもらいたいという願いがあるのではないだろうか。
クルマメーカーも負けてはいられない。トヨタ自動車は、クルマの後部座席に乗る子どもが遊べるiPhoneアプリ「Backseat Driver」を開発している。GPS機能を使い、自分が乗っている現実の車と同期して走る「パパカー」と、iPhoneを左右に動かして操作できる「マイカー」で、一緒にバーチャルドライブを楽しむことができる。
パパカーが落としていくアイテムや、地図情報と連動した施設のランドマークアイコンを集めると、ポイントが貯められる。これを使って、マイカーを自分だけのデザインにカスタマイズすることもできる。子どもたちは、きっと大喜びするだろう。
クルマは運転手が自己満足に浸るものではない?
ブリヂストンとトヨタ自動車、これら2つの事例の共通しているのは、運転手ではなく同乗者をターゲットにしているところだ。カーナビなどを除き、運転中にスマートフォンの画面を見ることができないのは当然だが、理由はそれだけではなさそうだ。
これまでのキャンペーンは、クルマの魅力を運転手に訴求することが中心だった。クルマとはオーナーが運転するものであり、所有するものという意味合いが強かったからだ。本人がモテるとか、自己満足に浸ることが最も大事な条件だった。
その要素がまったく失われたわけではないが、家族や友人などと同じ空間、同じ時間を共有することの楽しみが、より重要になっているのではないか。一緒にドライブをすることで、人とのつながりや思い出を作るプロセスに喜びを感じる。この2つのアプリは、そんなメーカーの発想の転換を表現しているのかもしれない。(岡 徳之)